第6話 好きな人には



 屋敷を抜け出した彼女と俺は、一緒に町をめぐる事にした。


 彼女はそうとうな箱入りらしくて、色々な物を見ては目を丸くして驚いていた。


 とある店の前で、買い物をするのにお金が必要だと聞いて納得した彼女は、以前無銭飲食してしまった事があるらしい。


 一つ一つの事柄に大仰に驚いては目を丸くするさまは、まるで子供のようだった。


 普段とは違う無邪気なその様子に俺は心が惹かれていった。


 そんな俺は、その次も彼女と屋敷を抜け出す事に決めた。


 屋敷にいる時と違って、彼女と変装して下町を歩いたり、観光名所を巡っていくのは楽しかった。


 そんな月日を積み重ねる事で、俺と彼女は徐々に仲良くなっていった。


 しかし、事態は思わぬ方向へめぐっていく事になる。


 それは俺がある時、初恋について話した時だ。


 彼女は沈んだ表情になった。


 そして、「今でもその子の事が好きなの?」という。


 俺は恥ずかしい思いになりながらも、「ええ、まあ」と返事をした。


 その言葉を受けた彼女は、なぜか「そう」と暗い表情のままだ。


「俺、好きな人には幸せになってほしいんです。何か悩み事があるなら俺に相談して下さい」


 俺は、彼女の性格が変わってしまったのは、何か家の事で問題があるのではないかと考えた。

 

 だから、彼女に打ち明けてほしかったのだ。


「そうよね、好きな人には幸せになってほしいわよね。分かったわ。真実を話す」


 彼女は決心したような表情で、俺をある場所へとつれていった。


 そこは、あの秘密基地だった。


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