第4話 いらっしゃい



 そんな事があったからだろう。


 俺は長い間行っていなかった、あの秘密基地へと足を向けていた。


 付近は、近くで木が倒れる事故があったとかで、立ち入り禁止になっていた。


 そのせいか、道がひどくあれていた。


 もしかしたら、あの彼女もあれから一度もここには来ていないのかもしれない。


 何年も行ってないと、道を忘れてしまってかなり右往左往したが、それでもなんとかたどり着く事ができた。


 やっとたどりついた秘密基地は、あの子供時代で時が止まったようだった。


 なぜか、中は綺麗だったのだ。


 埃もつもっていないし、道具も整理されている。


 すると、何か小さなものが基地の中を飛び回っているのに気が付いた。


「おっそうじ、おっそうじ」


 るんるんとした歌声が聞こえてくる。


 よく見て見ると、それは妖精だった。


 羽の生えた小さな体が、ぱたぱたと楽しそうに飛び回っている。


 俺は目を丸くするしかなかった。


「あっ、人間さん、いらっしゃい」


 その妖精は、まるで知り合いに挨拶するかのように話しかけてくる。


 俺はというと「どっ、どうも」と言うしかなくなった。


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