3話 不完全魔血
普通の魔血は普通属性血操作のための
彼の雇い主の男はそんなレヴィを無駄に天才的な魔法の才だと言った。
「君はどうやって
魔血の魔法は血に命令する
その為にはどんな最強の魔法士であろうとも
だがレヴィはその訓練もなしに自然と魔法が使えた
その男にどうして?と聞かれた時困ったように言った言葉は――
「頭に浮かぶんだ。変な言葉が」
自分にもよく分からない状況だった。ただ頭に浮かんだ
それは特異体質と言いようのない――あの男の言う無駄に天才的な魔法の才らしい。
だがレヴィは今までそれをあまり気にしたこともなかった
「何·····今の」
魔血の少女は呆然とした様子で目の前で起きた事を理解しきれていなかった
「相手消えちゃったよ……どういうこと?」
その一言にレヴィは小さくため息をついて言った
「あんた魔血だろ?」
その一言に少女は思わず俯いた
だがそんな彼女にお構いなくレヴィは突き放すように言った
「俺よりあんたの方が魔法に詳しいだろ。お嬢さん」
そう言うとレヴィは彼女突き放しそのまま石畳を歩き始めた
だがそれを引き止めるように彼女は強く言った
「待って!あなた
彼女のその一言にレヴィは一瞬足を止めようとした
だが、それを振り切るように振り返ることなくまた歩き出した
「どうしてせっかく貰った魔法の血を同族を殺すために使うの?そんなのおかしい!」
その言葉にレヴィの足はまた止まる
そしてその背中から強い怒りを滲ませながら振り返ることなく言った
「お前に何がわかるんだよ·····」
その言葉に彼女も一歩も引かない
「あなたの気持ちがわかるかって?ええ、分かるわよ!」
その一言にレヴィは初めて彼女の方を振り返り彼女を睨み返した
だが、何故か彼女はその金と紫の瞳を涙で潤ませていた
「きっと今までその生まれてつらい思いしてきたんだよね。そうなんでしょ」
彼女のその一言はあながち間違いではなかった
間違いではなかったこそ、その言葉に偽善的ななにかを感じてレヴィはさらに態度を硬化した
「魔血のお嬢さんのあんたになにがわかる?」
レヴィのその一言には小さく燃える怒りの色が見えた。
「今までなんの苦労もない生活しておいてなにが俺のことが分かるだ?ふざけるのもいい加減にしろよ!」
その剣で刺すようなその一言に彼女は一瞬閉口させる
だがその次には彼女の金と紫の瞳から涙がこぼれた。
そして彼女は一言言った。
「あなたこそ私のことを分かってないわ」
そう言うと彼女はレヴィに真っ直ぐ視線を真っ直ぐ向け言った。
「肌が白くて髪がこんな色で目がオッドアイオッドアイだから魔法が当たり前のように使える?それこそ見た目で人を判断してる。この帝国に蔓延る病的で差別的な目でしかないわ!」
いったいこの女はいきなり何を言い出すのだろう
レヴィは急にヒートアップしてきた彼女を呆然と見つめるしかできなかった。
だが彼女はズカズカとレヴィに迫るとさらに畳み掛けるように言った
「あなたみたいに肌も髪も黒くて魔法が自在に使える存在だっているのよ!普通考えない?その逆の存在もいるって!」
そう言うと彼女はレヴィの前で一言言った
「私。不完全魔血なのよ」
その一言にレヴィは思わず頭をひねった
最初は彼女の言う事がよく理解できていなかった。
不完全魔血など今まで聞いたことも無い単語だったからだ
「あーもう、あなたホント鈍いわね!」
彼女はイライラした様子でさらに言った
「わたしはセドナ・フロスト。一応貴族の生まれだけど生まれつきに無かったのよ。魔法の血ってやつがよ」
元々魔法の血がない――そんな秘密を暴露した少女セドナ・フロストはさらに言葉を続けた
「今日あなたたちが暴れたあの夜会。私はある使命があってあの場に潜り込んだけどあなたたちのせいで全てぶちこわし!私もうっかり警備兵に見つかっちゃって追いかけられてたの!それがさっきの相手よ!」
セドナのあまりの勢いにレヴィは思わず鼻筋を折られたような気分になった。
もはや彼女に大してわだかまっていた怒りとかそういう感情はどうでも良くなった自分がいる
そしてそんな止まらない彼女に呆れながらレヴィは言った
「わかった、わかったから·····」
この辺で勘弁してくれ――そう言いたげにレヴィは彼女に言った
なんかその瞬間魔法の使えない不完全魔血のセドナに主導権を握られたような――そんな気がした
「とにかく、私とあなたは表裏一体。ひっくり返せば似た者同士なんじゃない?」
「は?そんなの勝手に言うな――」
「はい、ここまで私は洗いざらい言ったのよ。あなたのことも教えてもいいんじゃない?」
なんだよコイツ――レヴィはこんなトンデモ理論を言う不完全魔血の少女に完璧に押されていた
理性的に考えれば相当強引な女だ。こんな女に惚れる男は本当にいるのだろうかと疑問になるほどだ。
だが――不思議と嫌いにはなれない女だともレヴィは同時に思った。
それが彼女の不思議な魅力ってやつかもしれないが
「なんで、俺がお前なんかに――」
「そうだこれから私行かなきゃ行けないところがあるんだ」
「はぁ?」
完璧流されかけてるレヴィを他所に、セドナは彼の手を臆することなく握り駆け出し始めた
「ちょっと待て!お前と俺は――」
「あ、お茶は出すからちょっと付き合ってね」
そう言うと彼女は
それはこの国の人口の八割いると言われる非支配階層魔法の使えない民いわゆる非魔血が多く住む帝都のスラム街の方向だった。
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