黒炎のレヴィ~武器として生きる少年は愛を知る

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序章 ある手紙

 拝啓 サランド公爵閣下。

 はじめに急で不躾なお便りをお許しください。

 訳あって私は公爵様に名乗ることはできません。

 無礼は承知でございます。このようなお便りを出すことさえ罪なことくらい公爵様は私にとって雲の上の存在であることはよくよく承知しております。

 だけどどうしても公爵様に私の意見をお知らせしたくペンを走らせております

 

 公爵様は今の魔法帝国の状況はどう見られておりますか?

 隣国夜美ノ国やみのくにと休戦協定が結ばれて十年。この国はつかの間の平和を謳歌している。

 公爵様を始め宮廷では属性派閥間で虚しい権力争いで忙しいことでしょう

 失礼、少し言葉が過ぎたかもしれませんね

 だけど帝国のトップに近い地位にある公爵様にはどうしても知ってほしい事実があるのです。

 これから書くことは公爵様にとってはどうでもいい下々の者たちの戯言になるかもしれません

 無視されることは覚悟しています。だけど頭の片隅だけでもいい。それでも知ってほしい話なのです

 この国は貴方方『魔血』と呼ばれる魔法が使える少数の人たちの都合で作られた歪で脆い国です

 そしてこの国ができるずっと前から貴方方『魔血』は魔法の使えない貴方方が呼ぶ『非魔血』を支配し続け差別し続けてきました。

 公爵様は『非魔血』は弱い存在だと思いますか?『魔血』に逆らうことすらできないゴミのような存在だとお思いですか

 結論から言うとそれは大きな間違いです。この国をバラバラにしかねない大きな間違いです

『非魔血』は決して弱くない。否、いつの間にか『魔血』を脅かすほどの情熱を密かに彼らは抱いています

 別の言葉で言えばそれは『革命』という熱と言えるかもしれません。

 そして私もその熱に可能性をかけている人間です

 敏い公爵様ならそれがどれだけ危ういかわかりますよね。懸念しているようにこの熱には彼の国が関わっています。

 私はこのまま熱が暴走し最悪な形によって帝国が瓦解することを危惧しています

 そうなればいろんな血が流れる。このアルティア大陸にたくさんの血が流れる結末になってしまいます

 どうかその暴走が始まるまでに…公爵様に楔を打ってもらいたい。

 そうするしか私達の暴走を止められないような。そんな気がしてなりません。


 私は公爵様に名乗ることはできません。

 不審な手紙なのは重々承知です。読まれないことも覚悟の上です

 だけど私はただこの国を変えたい。ただの理想だとしても誰も傷つかない方法でこの国の醜さを変えたいのです。

 魔法が使えないだけの差別はもううんざりです。

 そんな帝国が私は大嫌いです。

 だけどこの帝国に住む人達は好きなのです

 もうだれも傷つけたくない。

 私は―公爵様を頼りにしたいのです


 無礼な文体申し訳ございませんでした。

 だけど私は公爵様を信じています

 敬具

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