第17話 校長の営業許可を取り付けろ!

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【前回までのあらすじ】

校内カフェ開業に向けて準備に取り組むミフネ、フブキ、サユリの三人。

食品衛生責任者の資格を取得したミフネは、改めて校長に開業の申請を行うこととなった。

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 校内カフェ開業については、イシハラ先生と連名で、開業の趣旨と意義をしたためた企画書を校長あてに提出することとなった。

ミフネは家で一晩考え、カフェ開業のもっともらしい目的を考えた。

その結果、「学年や部活を超えた生徒の交流スペース」「展覧会やイベント、発表会など自主的で多様な学びの場」など、学校側が納得しそうな言葉を紡ぎ出した。

発起人のフブキが当初密かに想定した「生徒のたまり場」的なニュアンスをはるかに超えた説得力があった。


書類作成や各種手続きなど頭を使う仕事が苦手なフブキとサユリは、そういった仕事をミフネに一任して、自分たちは店内の準備を担当すると言い出した。

イシハラ先生は、最終的に書類にサインはするものの、基本的には「可能な限り自分たちでやりとげなさい」というスタンスを貫いていた。

校長室に書類を提出に行くときも、イシハラ先生は同行してくれなかった。

校舎最上階にある校長室に向けて階段を一段ずつ踏みしめる。

ミフネが校長室の扉の前で、ノックする拳を胸の前で用意したまま自分のタイミングが整うまで深呼吸をしていると、隣の生徒会室から眼鏡をかけたおさげの少女が出てきた。

「あら、ミフネさんじゃない。この間はどうも。」

ヨーコだ。

以前、大して面識のないヨーコに対して、生徒会室で啖呵を切って以来の遭遇なのでなんとも気まずい。


緊張していたタイミングに別の緊張をもたらす人物と遭遇し、ミフネはとっさに言葉が何も出ず会釈するのが精いっぱいだった。

同学年のヨーコは、自分を「ミフネさん」と敬称付きで呼んだ。

友達の少ないミフネにとってこの呼ばれ方は、至って自然だったが、ヨーコのそれは何か含みを帯びているように感じた。


「カフェづくりは着々と進んでいるようね。」

「ええ・・・。今日は校長先生に営業許可をいただきに来たの。」

ヨーコのまるで教師のような落ち着き払った物言いは、不気味ですらあった。

ただでさえ人見知りで、他人と話すのが苦手なミフネは、精いっぱいの社交性を発揮して答えた。


「そう。でも、やっぱり私は反対だわ。校内で生徒がお店を営業するなんて。あなたたちが悪ふざけをするとは思わないけど、大きなトラブルが起きる前に考え直すことをお勧めするわ。あなたは、成績も優秀で聡明そうだけど、あとの二人は・・・これ以上はイヤミね。やめておくわ。」

そう言うと、ヨーコはミフネの横をかすめて、階段の方へと肩で風を切るように去って行った。

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