10月 つわり 

10月21日(日)

昨日友人Mに電話をしたおかげで、随分気持ちが前向きになっている。


夫は「アンコールワットの朝日を浴びた子供だから、きっと大物になる」と言った。

私もそうかもしれないと思い、可愛かったら芸能界に入れよう等と思う。


「でも、今回のは全部オレの失敗だから、産んでも産まなくてもどっちでもいいよ」と夫は言ってくれる。

相変わらず数十分に一回、吐き気がある。感染症ではなく、つわりだった。


「オレのせいだから、精一杯看病するしサポートする」と夫は献身的。


まだ迷っているものの、とりあえず二人で「たまひよ」を買いに行く。

その帰りにスーパーによった。食料品を見た瞬間、酷い吐き気に襲われた。

食品の匂いが胃を刺激する。食品を見るだけで気分が悪くなる。

急いでスーパーから外に飛び出し、近くのトイレへ駆け込んだ。


こんなこと初めてだ。苦しい。


やっとのことで家に戻る。二人で買ってきた雑誌を眺めた。


深夜、酷い吐き気で起きる。トイレへ。暗い部屋の中で突然不安になった。


出産すると言うことは、産まれた子供を誰もいない大阪で一人育てると言うことだ。実家は北東北。母の助けは期待できない。


夫は協力すると言っているけれど、朝から夜遅くまで仕事がある。必然的に私しかいない。身内も知り合いもいない大阪で。


大阪でなんとかやってこれたのは、時々、気晴らしにイベコンのアルバイトをしていたから。夫と夜に居酒屋に行く楽しみがあったから。寂しい時は、二時間以上のウォーキングをして過ごした。

それでもなんとか馴染むのに一年以上かかった。


それらが、全てできなくなる。


育てられるはずがない。

とても怖くなって、泣いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る