食事は士気に関わりますからね。
保存食を試しに食べてみることにしました。
まず干し肉。
塩辛くてカチカチです。
水を口に含んで舐めながら噛みちぎりました。
味は……塩辛くて硬い肉ですね。
次にドライフルーツ。
これは悪くないですよ。
甘いし柔らかいです。
硬パンは、干し肉と同じように固くて顎が痛くなってきました。
味は……残念ながらよく分かりません。
というのもパン粉を食べているみたいに欠片を歯でこそぎ取るようにしか食べられないからです。
あ、だからパンの味ということなのかな?
ともかく私にとっては硬いのが問題なのですが、アルベリクさんの依頼は美味しい保存食とのことです。
この保存食を何日くらい食べ続けるのかは知りませんが、確かにこればっかだと飽きることでしょう。
味の改善は必須かもしれません。
食事は士気に関わりますからね。
とはいえ安請け合いしてしまった感はあります。
保存性が良くて美味しさを両立する……これなかなか難しいですよ?
* * *
まずアプローチを変えるところから始めました。
普通のパンを、長期間保存できるように加工するという手段です。
清潔で丈夫な紙で隙間なく梱包する方法を取ります。
この紙は特殊な加工を施しており、空気を完全に遮断します。
パンの素材と、件の紙とを錬金釜に投入してかき混ぜます。
天然酵母を使っているので、〈加速の魔法陣〉が必要になるのがネックですね。
ともあれ一時間ほどかき混ぜたら完成ですよ。
空気を通さない紙で梱包されたパンです。
この紙を使えば、ビスケットやクッキーなども保存できるでしょう。
問題はこの紙の製法がやや面倒だということでしょうか。
この紙、風耐性の形質を付与した紙なのです。
風耐性は魔物素材から取れるので、冒険者ギルドで買い取るしかないのですが、決して安い素材ではありません。
まあせいぜいひとつの素材で多くの紙に形質を付与するしかないわけですが……。
ともかくアプローチのひとつとして風耐性の紙を使った保存食を用意できました。
味は普通のパンやお菓子などを包めるし、保存性についても完全に梱包されているので長持ちするはずです。
カビが生えないか確かめるのに時間がかかりますが、とりあえず完成品を湿気のある場所にでも放置しておけばいいでしょう。
さてこれだけでは確実とは言えないので、もう一品、なにかしらこさえたいところです。
そうですねえ、干し肉とドライフルーツには手を入れづらいので、硬パンの改良をしてみましょうか。
硬パンは水分を完全に飛ばして油紙に包まれているものです。
水分がないためひたすら硬いのが難点ですね。
普通のパンから水分を抜いたら、ボロボロに崩れるのが目に浮かびます。
ここはビスケットを使った保存食を試作してみましょう。
数日に渡る試行錯誤の末に完成したのは、栄養満点のカロリーバーです。
油紙に包んで保存が効くように水分は完全に飛ばしてあります。
保存性はもちろんこれで良し。
味の方は改良に改良を重ねて、まあまあ美味しいビスケットに仕上がりました。
何が嬉しいって私でも無理なく食べられる硬さでしょうか。
風耐性の紙に包まれたパンは、見た所、カビなどは生えていません。
雑に放置しておいてこれなら、保存性に問題はないでしょう。
よし、冒険者ギルドに伝言しに行きましょうか。
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