第97話 新生ヴァレンですか?

「ど、どうしよう!」


「お、おい、落ち着け! アイリスが死ぬってどういう事だよ!? 詳しく話せよ!」


「えっと、僕達が住んでいる街に超巨大人型古代機械が迫って来ているんだよ! 止められるのは…………誰もいない……どうしよう……」


「超巨大人型古代機械? なんじゃそりゃ」


「う~ん、めちゃくちゃ大きくて強いやつ」


「ふ~ん…………アレク」


「うん?」


「お前、さっき、色々作れるとか言ってたよな?」


「あ~ゴミ箱の能力でね、リサイクルとかで色々とね」


「じゃあ、その大きいやつよりも大きいやつ作って倒せばいいじゃん」


「へ?」


「ゴミなら幾らでもあるぞ? アレクの為なら今からでも住民達総動員してゴミ集めるけど?」


「あ……」


 ピエルくんの言葉に、何故か涙が止まらなくなった。


 僕は何をしているんだ。


 何で勝てないとばかり決め込んで、ちゃんと現実をみようとしなかった。


 こうしている間にもアイリスがあいつに踏まれるかも知れないというのに……。


 それに、アイちゃんが繋いでくれたこの命を……無駄にしてはいけない!


「ありがとう、ピエルくん。でもゴミ集め・・はもう大丈夫。僕の新しいスキルなら…………、スキル! ゴミ収集!! ――――こんな感じで綺麗……に…………え?」


「はあああ!? なんじゃこりゃ! ゴミが全部無くなった!! ってあれ? なんで全て無くなってるんだ?」


 ゴミ超収集して、何とか『ヴァレンシア』を修理出来ないかなと思っていた。


 でも今はそれどころじゃなくなった。


 何故なら…………。


「おい! アレク! ゴミ処理場・・・も無くなってるんだけど!?」


 そうなのだ。


 今まで『ゴミの町、ヴァレン』を一番支えていた『ゴミ処理場』の古代機械。


 その古代機械がゴミ箱に入っていた。


 それも……僕の想像を遥かに超えた本体・・ごと。


「う、うん。ゴミ処理場、出すね?」


「は?」


「ゴミ召喚」


 そして、僕はゴミ箱に眠っていたゴミ処理場を取り出した。


「なんじゃこりゃ!!!」


 ピエルくんに住民達が飛び跳ねるほど驚いた。


 それもそうよね。


 『ヴァレンシア』のようなモノをこんな間近で見るとびっくりするよね。


 僕達がゴミ処理場として見ていたものは……超大型船の最上部の部分だった。


 一先ず、皆を落ち着かせ、僕は中に入った。


 入り方も『ヴァレンシア』と同じだったので、迷わず入れる。


 一応、既に僕の『ゴミのリサイクル』でピカピカの新品状態になっていて、中も凄く綺麗な状態だった。


 『エレベーター』というモノに乗り、『司令部』に着くと広々とした管制室になっており、前方からぐるっと見回れるようになっている。


 中央の機械から「マスター、登録ヲ、オ願イシマス」と言われたので、近づいて登録を進めた。


 登録も順調に進み、最後に「既存ノ、デバイスハゴザイマスカ?」と聞かれた。


「デバイス? デバイスって何?」


「デバイストハ、マスターガ、事前ニ、使用シテイタ、端末ノ事ニナリマス」


「端末……って! まさか、アイちゃんの端末……も端末だよね?」


 僕は箱の中に眠らせていたアイちゃんの亡骸破片を取り出した。


 取り出した瞬間に機械は「既存ノ、デバイスヲ、確認シマシタ。コレカラ、トレースヲ行イマス」と喋ると、アイちゃんの亡骸破片に不思議な光を当て始めた。


 ――そして、数十秒後。


 僕の前に奇跡が起きた。


「マスター!」


「アイちゃん!」


 アイちゃんは以前の元気な姿で僕に抱き付いてきた。


 ああ……元のアイちゃんの温かさを感じられる。


「本当にアイちゃんなの?」


「うん! マスター! また私を選んでくれてありがとう!」


「選ぶだなんて! アイちゃんは僕を救ってくれたかけがえのない家族だよ! これからもよろしくね!」


「マスターと私が……家族…………うん! 私も頑張るからね!」


 僕は新しいを手に入れた。


 アイちゃんの助言により、ヴァレン町に住んでいた全住民達には『新生・ヴァレン』を最大限活用する為、全員雇う事になった。


 ピエルくんに、「今すぐ僕に全員雇われて欲しい。アイリスを助けに行こう」と言うと、何も言わず、頷いて住民達を直ぐに説得してくれた。


 ピエルくんの今までの頑張りで分かるように、誰一人かけることなく、全員『ヴァレン』の組員となってくれた。


 僕達は全速力で『ベータ領』に向かった発進した。

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