第32話 魔女転移ですか?違うですって?
「もう上がったの! 凄い! おめでとう!」
「ふふっ! しかも、今回は新しいスキルを覚えたんだよ! しかもものすごいスキルを!」
目をキラキラさせて報告してくれるアイリスが可愛らしかった。
でも普段から常に『魔女ノ衣』を纏っているから禍々しいんだけどね。
あと、『魔女パンチ』本当に痛い。
「どんなスキルなの?」
「ふふっ、聞いて驚け! 『まじょまじょ転移』を覚えたの!」
ドヤッ――――。
「えっと……、『魔女転移』ね?」
「違うわ、『まじょまじょ転移』だよ」
「えっと、ひとまずいいかな?」
「え? うん? いいわよ」
「ぷはははははは「まじょ~ぱ~んち!」」
あ~空はこんなにも青くて~。
「って! 魔女パンチ本当に痛いから!」
「笑わないでよ! 本当にそんな名前だから!」
「分かったよ! それで、その『まじょまじょ転移』は何が出来るの?」
「んとね、決めた場所に何時でも、何処からでも戻れる感じかな?」
「成程……?」
「えっとね。例えば向こうの森にアレクと狩りに行って、そこから一瞬でベータ町まで戻って来れるんだよ?」
「僕も?」
「そうだよ!」
アイリスが嬉しそうに笑顔で答えた。
「これで二人で一緒に
「それじゃ、その『まじょまじょ転移』試してみようよ」
「分かった!」
◇
僕とアイリスはベータ町が見えなくなるくらいの距離まで移動した。
ベータ町には時折現れる呪われた森からの魔物がいるため、僕とアイリスの二人のどちらかは残るという制約があった。
もし転移が使えるなら、いつでも戻れるのは大きな力になる。
「こほん、ではここから『まじょまじょ転移』使うね?」
「分かった! よろしくね!」
「スキル!!! ま"じ"ょ"! ま"じ"ょ"! て"ん"!! い"!!!」
アイリスにしては随分な気合いの入れようだった。
一言一言力が入ってるし、めちゃドス声だけど、喉大丈夫かな?
アイリスの詠唱が終わると、アイリスの周辺には黒い光が広がり、空間が歪む? ような感じになった。
――――そして、景色が移り変わり、いつも見慣れている『ベータ町』だった。
「おお! アイリス! 凄いよ!!」
アイリスも凄く喜んでいた。
ただ……どうしたんだろう?
「アイリス? どこか具合悪い?」
ちょっと引き摺った表情になった。
そして、彼女は地面に指で文字を書いた。
――――「喉が痛い」と。
◇
超絶便利スキル『まじょまじょ転移』。
その効果は僕の想像以上だった。
遠くの場所に一瞬で行けるスキル。
まさに『魔女』に相応しいスキルなのかも知れない。
でも非常に大きなデメリットがあった。
このスキルの詠唱は、物凄く力説しないと使えないらしい。
アイリスは声もガラガラになって、その日は喋れなくなるくらいだった。
あまりにも面白くて笑いこけてたら、アイリスから無言で『魔女パンチ』が飛んできた。
あれが無言で使えるんなら転移も使えそうなものなんだけどね~。
兎にも角にも、今度からは呪われた森に肉調達に行くのも楽そうだ。
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