-57- 「一角堂の鬼いさん」
町内の端っこにある、古い建物の骨董屋さん。
お店は「古物屋一角堂」という名前で、着物を着た若いお兄さんが一人でやっている。
このお店に人間のお客さんが来ているところは見たことないけれど、人間じゃないイキモノはうようよいる。
けれど、そこでは不思議と怖いイキモノには遭ったことがない。
時々お店を覗きに行くんだけど、今まで一度も買い物したことないのに、お兄さんはいつもにこにこと相手をしてくれる。
一角堂のレジの上には、何かの動物の角みたいなものが飾られている。
僕はいつもそれが気になって仕方がないから、ある日その角について尋ねてみた。
「ああ、坊ちゃん。これは売り物じゃないんですがね、気になりますかい?」
そう言って、お兄さんは飾り付けられていた角を台から降ろして見せてくれた。
「うちの家宝みたいなもので、実はこいつが店の名前の由来なんですよ」
その角は、古く見えるけれど、何だかほんのり光ってる。
「なんだと思います? 実はね、鬼の角なんですよ」
それを聞いて、僕は「なるほど」と思った。
「まあ、今時の子どもさんは、鬼なんて信じないでしょうけどね」
そう言いながら、お兄さんは角を台に戻した。
他の子どもは信じないかもしれないけど、僕はその話を信じている。
お兄さんのオデコには、他の人には見えない、角を根本からへし折ったような痕があるからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます