-11- 「いくらやおじさん」

 夕暮れどきにたまに出会う、口の大きなおじさん。


 どういう意味かわからないけど、「いくらや、いくらや」と子どもにしきりに話しかけている。


 でも、薄いイキモノだからほかの子どもは気づかない。


 僕は見えているけれど、話しかけられても気づかないふりをしている。


 たぶん、口をきいたらよくないやつだから。









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