第12話
だが、3人の心が晴れることはなかった。
それどころか、一刻一刻と時計の針が動くたびに苦しみは増していき、いつかこの凶行がばれるのではないかと怯える気持ちが胸に芽生え、じくじくと膿が溜まって膨れるように育っていった。
自分たちには気づいていない「作戦のミス」があったのではないか。
いつか殺人犯として糾弾される日が来るのではないか。
そもそも復讐は正しかったのか……。もっとほかの方法で償わせることもできたのではないか。
人が人の命を奪うことの重みは、時間とともに増していった。
3人は精神的に追い詰められていった。
彼らを追い詰める犯人とは、それぞれの良心であった。
殺人とは、これほどまでに人の精神を蝕むものなのかと、真優は罪の重さに何度も吐きながら泣いた。このような罪を抱えて平然と生き続けている悪鬼は一体なんなのか。自分たちが手を下すまで、山野田という悪鬼が平穏に暮らしていたこの世は一体何であるのか。
この世界のどこに救いがあるというのだ。
「もう何もかも終わりにしたい」
真優がそう言い出した。
「そうだな」
京輔も同意した。もう疲れてしまったのだ。
「殺人計画を言い出した私には責任がありますから、私も一緒にいきます。それに、私ももう疲れました。楽になりたい……」
古沢もそう言った。
そして、3人でガス自殺を図ったのだった。
しかし、あるバスツアー参加者により、3人の命は助かってしまった。
彼らは感謝などしなかった。かといって恨むでもなかった。ただ、もう疲れ果てて、何もかもがどうでもよいと思っていた。まったくの無感情だった。
いつか心が生きる力を取り戻した日には、何か感じることもあるだろう。
だが、その日がいつ来るのか、誰にもわからない。
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