(-_-メ)和) いつまで経っても慣れない俺の方が悪い気がしてきた。
「ごめんねカズくん、
「いい加減、いつまで経っても慣れない俺の方が悪い気がしてきた」
結局、摘まみ出されはしなかったが、店員の胡散臭げな視線に耐えかねて一階のスター〇ックスまで逃げてきた。
慌てていたので、ナガサは試着していた服をそのまま買って着ていた。
「カズくん本当に買ってもらっちゃって良かったの?」
「別にそんなに高いもんじゃないしな。ナガサもそれでいいのか」
注文の列に二人で並ぶ。
「むしろこれがいい。こういうちょっとストリートっぽいのやってみたかったんだ、けど……」
「けど?」
「みんな、わたしが可愛くいた方がいいみたい」
ナガサが言った。
「ほうか(そうか)」
俺は言った。
「感じ悪い?」
「いや。普通だ」
「……ふつう」
なにやら戸惑ったような驚いたような表情をしていたので、もう一度言った。
「ナガサ、お前は、普通の女の子だ」
「うん」
今度は、いつもの笑顔でナガサは言った。
「吏依奈、席と荷物ありがとうね」
「……ええ」
四人掛けの席には、12ラウンドをフルで戦いノックアウトされたボクサーみたいな女が座っていた。俺とナガサはそんな二俣に向き合う形で座る。
「ほい、何とかかんとかフラペチーノ」
「カズくんス〇バ来たことなかったんだって」
「ぼっちの高校生はコ〇ダのシロノワールで十分だからな。なぁ二俣」
「そうね」
イジってやるつもりで発した言葉を肯定され、俺は苦笑するしかない。
「私、今日はもう帰るわ」
「ええ!?」
「まぁ少し待たれよ二俣」
本気で腰を浮かそうとする二俣をどうにか止める。
「何がどうしたんだ?」
「自分に愛想が尽きたわ」
二俣は、ボーイッシュになったナガサを見て言う。
「その服、似合ってるわ。私にはそんなの、思いつきもしなかった」
「個性は人それぞれだろ」
「そういうことじゃない。考え方よ」
今度は俺の方に向かって言う。
「私はくるりに着させたい服を選んだ。相楽くんは、くるりが着たい服を選べた。そう考えたら、今までの私のやっていたことは―――」
はぁ、と一息ついてから、
「私の理想をくるりに押し付けていただけ」
と、言った。
「……まぁ、独占欲が強いタイプではあるか」
そういうのも、煎じ詰めれば“人それぞれ”だろう。
だが、二俣はそれを反省することを選んだ。
あまりに一方的だったと思った。
俺から言えることはない。
黙って聞くだけだ。
「留年してもう学校辞めようかって思って日に、迷子のくるりに会えたの」
その話は前も聞いたが、黙って聞くと決めたので。
「春が運んだ桜の妖精、神が遣わした翼の無い天使かと思った」
落ち込んでる割に
「それが間違いだったのよね」
肯定も否定もせず、無言を貫く。黙って聞くと決めたので。
「私はくるりを利用してた。この子を助けるお姉さんって役割を自分に与えて、留年の傷から逃げ回ってた」
傷、か。
ようやく、俺の口出しできる領域の話になった。
「二俣、俺が悪く見えるか」
「え?」
俺はマウスガードを外した。
「この痣も、傷も、生まれつきだ。俺はこの傷から16年以上逃げ回ってる。それを、二俣は悪いことだと思うか」
「そんなこと……絶対に思わないわ」
「ほうか」
俺は再び“おしゃぶり”を装着する。
「俺の、傷を隠す
「……なによ。それこそ、ずるいじゃない」
ぷい、と顔を背けた先に、ナガサがいる。
「吏依奈、わたしは嬉しいよ」
「なにが?」
「吏依奈がわたしのことをそうやって―――言い方は悪いけど“利用”してくれてたこと」
ナガサは考えをまとめるように少しだけ「うーん」と唸ってから、言った。
「わたしって、方向音痴だし、ボーっとしちゃうし、昔から迷惑かけてばっかり。だけど、だから下手に背伸びしないで、ちゃんと人に頼っていこうって決めたの」
俺はそれを、とても強い決意だと思った。たぶん俺たち三人の中で、ナガサが一番人間としてできあがっている。
「でね、そうやって人に頼って生きてたら、いつかはわたしも人に頼ってもらえるかなって思った」
「え?」
「へぇ」
その考え方は面白いと思った。
考えたこともなかった。
二俣も同じらしい。
「だからわたしは嬉しいんだ。ようやく、わたしを頼ってくれる人が現れたって。吏依奈、ありがとう。これからはもっとわたしに頼ってほしい。甘えてほしい。頼りないかもしれないけど、頼ってほしい。お返しに、わたしもたくさん頼っちゃうから」
まったく。
ナガサがまさしく天使のような笑顔を向けているというのに。
顔を覆って泣いていたんじゃ、それが見えないだろう、二俣よ。
それに、あんまり号泣されると。
「ねぇカズくん、周りの視線が、ちょっと……」
仕方ない。傍から見たら男女二人が女一人を泣かせている構図である。
「ナガサよ。こういうときはキョロキョロするのが一番ダメだ。真っ直ぐ前だけを見ておけ」
二俣が落ち着くまで五分ほどかかった。
「ようやく泣き止んだか」
などと安心している俺はバカだった。
「くるりいいいいい!! やっぱり捨てないでええええ!!」
「ナガサァ! 撤退ィ!!」
「了解だよカズくんっ!!」
二俣の魂からほとばしった叫び声により、俺が百合カップルから女を寝取ったことになりましたとさ。
周りも「そっちか!」みたいな顔をするでない。
「必ず何らかの形で暴発しとるなこいつは。情緒の爆弾魔か」
「ごめんね。恐らくわたしが起爆スイッチになっちゃってるよね」
俺とナガサは錯乱する二俣を両脇から抱えるようにスタ〇から連行した。
「俺たち、もうこのイオ〇出禁になるんじゃないか」
「とてもそうなる可能性がいなめないよぉ」
とはいえ、どこか晴れがましい気分でもあった。
恐らく、今日この場でナガサと二俣は改めて友達になれたのだろうからだ。
【続く】
キャラプチ紹介
☆コーヒー、ブラックで飲める?
(@*'▽') 飲める。
(-_-メ)和) 飲める。
(吏`・ω・´) 飲めない。
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