心根の腐ったヒロイン
「な、なんなの。あなたたち……」
「なにって言われても、なあ……?」
「そうね、私たちは『あなたが演じた舞台』の演者が足りなくて駆り出された舞台監督、ってところかしら」
「そうなると俺は脚本家かな」
カタカタと震えるから、握りしめている柵がカチャカチャと音を奏でる。
「私たちは、あなたたちの言い方でいうと『神様』かしら?」
「俺は管理者のつもりだけど、この世界を恋愛ゲームで作ったのは俺たちの会社だったからなあ」
「正確にいうなら、私たちの会社のゲームがこの世界をうみだしたのよね。だからこの世界の神として、恋愛ゲーム脳の連中の魂を矯正させる舞台に使ってるのよ。矯正出来なければ悪役令嬢として。それでもダメなら処刑ありの悪役令嬢の親として人生を繰り返してもらうのよ」
「まあ、記憶は七回目でリセットされるから。ということで、お迎えだねえ」
金属音が止み、今度は地下の扉をガチャガチャいわせている。
「ああ、私の姿をしたお人形は最初からここにきていないわ。王太子の婚約者として、第三王子の国葬に列席してるから」
「あーあ。今回の舞台で死んだのは俺だけか」
「前回はハッピーエンドだったわね」
「ヒロインは幼馴染みと結ばれて学園に入らなかったから、第三王子と悪役令嬢はハッピーエンドだったからなあ」
「ええ。孤児院にいるところを男爵が迎えに来ても『私の両親は亡くなった二人だけです』といって男爵家に入らなかったもの。『平民の私は貴族になどなれません』って、小さくても賢い子だったわ。今頃違う世界で幸せな一生を送っているわよ」
最初は思い出していなかったヒロインだったが、孤児院に現れた父親を見てゲーム内容を思い出した。
しかし彼女は同じ孤児院にいる隠しキャラ推しだったのか、彼と離れるのを嫌がった。
隠しキャラだったのはヒロインが貴族になったから。
貴族にならなければ隠しキャラにならず、平民として二人で幸せにすごせるのだ。
そして二人でこの世界から卒業してワンランク上の幸せな世界に旅立った。
「あー、まったく惜しい彼女を手放してしまった……。せっかく今回代理登場したからまた賢くて可愛い子だったら管理者に引き上げたかったのに……。ルートに現れたのは心根の腐ったヒロインだしさ」
「いいじゃない。悪役令嬢ルート専門女優を手に入れられたんだから」
「ああ、神は恋愛脳で殺人を犯す魂はいらないといって救済を放棄したからな。百以上ある大陸で悪役令嬢として断罪されて処刑。ヒロインは守られて逆に突き飛ばされて階段落ちで首の骨を折って死亡。魔物の生き餌になって手足をちぎられたり」
「究極はヒロインイジメて国外追放。魔の森で彷徨って魔物化して、中ボスとして勇者一行と対面。聖女のヒロインに半殺しにされて、生捕り状態で王城の広場に繋がれて。他の魔物と共に『人間から魔物に堕ちた心根の腐った証明』として公開処刑。ヒロインの聖女度をあげるためのパフォーマンスとして光魔法で苦しんで死んでいく」
生前の彼女は女性の本性を暴く天才として有名だった。
私たちの会社に入ったのも『思った通りの設定で作らせてくれる』という理由からだった。
しかし救済も設定されているため、いかに幸せを引き寄せられるかを追求する恋愛シミュレーションゲームとして有名になった。
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