第30話丁々発止(ちょうちょうはっし)
飲みにいった翌日
「ねえ、大我約束したよね勝手に動かないって」
色々と調べものをしている俺の後ろにいつの間にかシュリーが仁王立ちしている。
「大丈夫だよ。約束は守ってるよ、勝手には行かない、今回も一緒に行くつもりだったし、さわり程度の調査のつもりだったからさ」と返す
「そ、ならいいんだけど」そう言ってシュリーはパソコンの画面の覗き込んでくる。
俺は今わかってる状況をかいつまんで説明した。
シュリーからはただの女好きの、変態の仕業じゃないのかと言われた。
まあ確かに一見そう見えるだろう、普通ならな、しかし式を使えるほどの奴だ、ただの変態ではないだろうと説得した。下手したら俺は呪い殺されてたし。
さて、乗り込むにしてもRチャイルなる人物について詳しく知る必要があるな。敵を知ってると知らないとでは雲泥の差だし。
ネットで調べた限りでは前と同じでありきたりなことしか書いてない。俺は名前からではなく画像の近似値検索をしてみた。
すると髪の色や着てる服の雰囲気の違いからか別人に見えるが、ほぼ似たような人間が引っかかった。新聞のニュースサイトだ。
えーと、そこにあったのは数年前の傷害事件の記事だった。何々山田紀夫?傷害の容疑で逮捕か、俺はその名前その事件の経緯を追ってみる。傷害の容疑で逮捕実刑を受けて現在は服役中のはずと。服役中となれば本人である可能性はないか。しかし何らかの関係者である可能性は高いだろう。ちょっと面会を申し込んでみるか。
刑務所の面会は基本的には第三者はできないので知り合いの弁護士にお願いしてみる。上手く会えるといいのだか。
三日後、依頼した弁護士から連絡があった。山田紀夫は現在入院加療中にて面会不可なのだそうだ、
ちなみに何の病気か聞いてみた。
表向きは心筋梗塞で倒れたとなっているが、どうもよくわからないらしい、なんでも作業中に、ばったり倒れてそれ以後意識が戻らない。戻らないというよりは意識がなくなっている?といった感じ、起きてはいるし目も開いているが瞳孔が開いている。何ともよくわからない状態らしい。曰くまるで魂が抜けてしまったかのようだと。医学では解明できない症状。常識で分からないなら妖異が関係しているならありえるか。そっちの線がついえたなら、いよいよ直接乗り込むしかないか、
翌日俺はシュリーと共にチャイルの事務所を訪ねてみた。
コンコンとドアをノックする
「どうぞ」意外にも中から返事があった。
「失礼します」俺は恐る恐るドアを開けて中に入る。
「やあ、やっと来たね、待ってたよ」
入るなりチャイルは俺にそういってきた、部屋は殺風景で大きな机と革張りの黒い椅子が置いてある。その椅子にチャイルらしき人物が外の風景を見ながら座っていた。
流暢な日本語だ
「待ってた?俺をですか?」
「ああそうだよ、最近俺の周辺を嗅ぎまわっていたようだな。相変わらず人間というのは姑息なことで」結構直球で来たな。しかも人間ときたか。人外確定か?
「うーんちょっと姑息とは違うと思うんですけどね」
これなら回りくどい質問より本題を聞いたほうがいいかもな。
「じゃああなたが女性が連続で失踪してる件の犯人なんですか?」俺はドストレートに聞いてみた。
「犯人ね、原因というのであれはそうだな。もっとも強い男が好きなだけ女を抱き酒を飲むのは当たり前のことではないのかな?」
随分と前時代的な考え方だな。古い時代からの妖異なのだろうか。
「当たり前というわりには狸でごまかしたりしてますよね」
「先の失敗に学ばぬほど、愚者ではないのでな」
先の失敗ね。こういうことをするのは初めてじゃないってことか。
「さらに皆帰りたくないというほど楽な生活をしておるわ」
「そりゃよかったです。俺が来た目的はあなたなんで。正直女の子達はどうでもいいんですよね」両手を広げて上に向けておどけて見せる
「なんだ正義とやらの味方というわけではないのか」
そういってチャイルは煙草に火をつける。大きく煙草を吸い込むとゆっくりと煙を吐き目を細めて言った。
「でわ、なにようかな?」
俺はだまってポケットから球を出した。何か確証があったわけじゃない。今まで全くヒントが無かった代物だが、なんとなくチャイルという男はこれを知っているのじゃないかという予感があった。
チャイルは一瞥をくれると再び煙草をふかした。
この反応から、こいつは球について何か知っていると確信した。
「お前だったのか」横目でそう言いながら俺を見てくる
正直チャイルが何をもってそう言ってるのか見当もつかないがここは話を合わせておくべきだ。
「だったら?」
今度は目をつむって手にしたグラスをあおっている。
「ふむ、なかなか面白いやつだの」
対峙していても、つかみどころがない。いっそのこと吹っ掛けてみるべきか。
「埒があきませんね、こういう時は考えても仕方ないので」と言って俺は準備運動を始める。そして、地の構えをとる。
「ふん、お主、今でのやつとは違うの、
どうやら相手になってくれそうだ。相手の正体がつかめないてないから過去から対応を練る方法な取れないな。ならな正攻法で行くか。
いささか呼びすぎな気もするが俺は武蔵を降ろした。シュリーの目線が痛い。
ゆっくりと対峙する。
強い、武蔵の感覚が相手の力量を俺に伝える。武蔵の感覚でもトップクラスの相手だ。チャイルはゆっくり椅子から立ち上がると脇に置いてある刀を抜いた。
「ふむ、ではまいる」言い終わるや否や
いきなり距離を詰めてくる。抜刀してから移動が速い。切り上げてくる、
いなしではかわせない。地の構えのせいでワンテンポ対応が遅れた。
俺は振り下ろして迎え撃つ。ガキン鈍い音とともに俺の刀がはじかれる。
はじかれた勢いにそのままに後ろへ敢えて吹き飛ばされて距離をとる。
何という馬鹿力だ、
いなすために後ろに飛んだとはいえ、吹き飛ばされるとは、
お互い構え直して距離をとる。
またもや一気に距離を詰めてくる
下段からの切り上げか、同じ攻め口で来るのか、俺は二刀をクロスして切り下す。
今度は何とか切り上げを止めることができた。両手がしびれるような感覚がある
やはり馬鹿力だ、繰り返してると腕が動かなくなりそうだ。
力に力では勝てない。武蔵本人ならいざ知らす、ベースは俺だ。無理が過ぎるというものだ。力部族には対抗するためにはスピードしかない。速度。随一の剣速の持ち主。だれだろう、俺の知っている中では。そうだ、沖田総司しかない。新選組一番隊組長
俺は急いで沖田を降ろす。
瞬間今までにない倦怠感に襲われる
呼吸が苦しい まさか肺結核の症状?
詳しくはわからないが沖田の魂に苦しさが刻まれているのかもしれない
全くただでさえ厳しい状況なのに
「ふむ、なかなか面白い術を使うの、先ほどとは全く違う気配がするの。
ではこちらも」そういうと周囲の景色が一変した、事務所だったはずなのに何もない真っ暗な空間になった。一体何をしたんだ。
「少しだが本気をだそうとおもってな。周りを壊せないようにしただけじゃ」
「そうか、助かる。あんたほどの化け物には色々手を変え品を変えていかないと対抗できないからなね」俺は胸を押さえないがら言った
「それは誉め言葉として受けていいのかの?」笑みを浮かべてチャイルは言った
「ご自由に!」言うと同時に突きを放つ、
キイィィンとう音とともに火花がちって刀が弾かれる。
刀を横にして平地で俺の剣先を受け止めた。
「なかなか速いがまだまだかな」
「ふ、それが全力とおもわれても困るんだけどなあ」
「面白いならば全力で来るがいい」
今度ははじめから横に構えている。さすがに強者はわかるらしい、
お互い沈黙が続く。チャイルが視線をそらす。
誘いなのはわかったがあえて乗る。狙うは心臓。またしても激しい金属の当たる音。
まあ狙いがばれていれば受けるのも容易いか。
「言うだけはあって先ほどよりは早いかの」
奴の言い終わりに被せてまた突きを放つキィンとまたもや弾かれる。
「しかしながら同じことしかできんのか、いい加減飽きてくるわ」
「あいにくと馬鹿なのでね同じことしかできんのですわ」
と言いつつも俺には一つ勝算があった。そろそろ頃合いだろうか
ほんの少しだが音が変わったようだしな。
「さて、では飽きられたようですので、オレの持てる力を出しきります。る次の攻撃を受けれますか?」
確実に受けさせるためあえて挑発する、
「先ほどの感じからすると、さほどのことができるとは思えんがな、まあ策を労しないことに敬意を払ってあえて受けてやろうではないか」
「ありがとうございます」
意外に好い人?だったな。武士道精神というか、悪役ではないな?と感じつつも俺は呼吸をととのえ間合いをはかる
掛け声とともに沖田総司の必殺の三段付きを放つ。やつは狙い通り心臓をかばってきた。バイイイン、という音とともに刀が折れる。「む!」と慌ててチャイルが防ぐも俺の突きはそのままやつの心臓に吸い込まれていった。
俺の本当の狙いは日本刀の唯一の弱点。鍔の付け根を狙っていたのだ。
うめき声を出してチャイルはその場に倒れた。
「貴様これを狙っていたのか」
「ああ、始めに防がれた時からあんたには突きが通じないとわかったからな」
刀の一番脆いところを狙わせてもらった。
日本刀は叩いて伸ばして作成されるため、その大元である鍔の付け根付近が構造上脆いのだ。
ちょっと卑怯かなとも想ったけどあんたには正攻法では勝てないからね、
「中々面白かったぞ人間。正直卑怯なやつばかりかと思っておったからの」
「俺もです・・あの名前をお伺いしても?」ここで聞くのもおかしいかと思ったがどうしても聞いておきたかった。
「ふむ、本名など、とうに忘れたが周りから酒吞童子とそう呼ばれておったな」
酒呑童子、確か平安時代に大江山に陣取って源頼光に討伐された鬼のはず、酒に酔って寝てる所をやられたはず。
「どうした、名を聞いて怖気着いたか。まあわしにまつわる伝承は人を食ったとかそういうやつばかりであろう、歴史とは常に勝者によって残されるもの、負けたつもりはないがな、死者には話す権利もないからな。まあ、
そういうと、童子の姿はかきけすようにきえていいった。
丁々発止
激しく議論し合うさま。 刀などで激しく音を立てて打ち合うさま。
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