2章:自縛霊
第6話 遭遇
~簡単紹介~
人形の
――――
学校の課題を終え、夜の散歩途中で雫は車の通りが激しい大通りからスマホのライトを照らしながら川の土手へと降りた。耳に奥まで響くカエルの鳴き声に囲まれながら川に沿って歩を進める。
「菊……。アレ、視えるか?」
雫は一瞬目を疑ったがソレは確かに噂通りの行動をしていた。赤川に架かる赤川西橋の中央付近。顔や服には靄がかかっていて性別はわからない。身長は170㎝程度、アレが生きている人間ではないということだけが分かった。意思疎通は袖に隠れていた菊の震えっぷりから不可能なのだと感じ取れた。
「今回は噂を見に来ただけ? それとも依頼なの……? 雫」
「噂だよ。学校で聞いたんだ。この赤川の廃橋に何度も幽霊が出るって」
橋の手すりに足をかけたソレはゆっくりと身体を前に倒れるように赤川に落ちて消えた。ソレを雫は目で追った後すぐに雫は視線を橋に戻すとそこにはまたソレが足をかけようとしている。
「自殺してる……の、か? 何度も……何度も……繰り返すように」
「自殺って……。もうとっくに死んでるのに……」
死んだ魂が現世に滞在する理由の1つに未練という名の鎖による縛りが存在する。大切な人に別れを告げられなかったとか、宝のようなものが心配だとか、自分を殺した殺人犯がまだ捕まっていないだとか……。軽い未練なら雫は菊を通して意思疎通が可能であり、これまでも事件を解いてきた。しかし目の前のソレはこれまでとは違う別物。未練が大きすぎてやりたくもないはずの行動が呪いのように何度も繰り返されているように見えた。
「地縛霊……いや、自縛霊だ」
自縛霊とは勝手に雫が名付けたもので、誰かに危害を加えるつもりが無くて自分で自分を縛って何かを伝えようとしている幽霊のことだという。
「……どうするの?」
「それはもちろん、調べるよ」
「えぇ~~! ヤダヤダヤダ! 怖いよ~!!」
「怖いのは見えないこと、見えるものは怖くないって言ってたろ? それにボクは人形探偵。目の前で起きてる謎を放置するなんてこれから一生気持ち良く眠れないだろう」
「はぁ~~ぃ……。ま、いつものことなんだけどさっ」
調査に後ろ向きな菊をいつものように説得してソレが飛び降り続けている廃橋の中央へとゆっくりと近づいて行った――。
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