1-4 嫌な予感
相変わらずどんよりとした雲が広がる空。玲花はスマホ画面と睨めっこしながら見知らぬ住宅街を歩いていた。
「……ねぇ、今からでも引き返さない? 」
玲花の後ろをついて行く甲夜の表情は、まるで今の空のように曇っている。
「まだ言ってるの? 」
玲花は自身の背後に憑く霊に少々呆れ気味だ。
「だってさぁ……目的地に近づけば近づくほど寒気がするんだもの」
「そう? 私は全くそんなことないけど……」
「行ったってことにしてさ。そのお菓子食べちゃわない? 」
「だめだよ、そんなことしちゃ。ちゃんと頼まれたものを届けなきゃ」
「玲花は真面目だよね。僕だったらこんな歳になってまでおつかいなんてしないよ」
「由佳ちゃんの頼みだから余計ちゃんとやりたいの」
「玲花は本当に叔母さんが好きだよね」
甲夜は態度は少々投げやりだ。玲花は気にせずに歩みを進める。
しばらくして、玲花は古い西洋風の屋敷の前で止まった。表札には達筆な文字で「封戸探偵事務所」と書かれている。表札がなければここが探偵事務所だとは思わないだろう。
「ここね」
玲花は紙袋に入っていた封筒を取り出し、宛名と見比べる。
「やっぱり嫌な感じはここからきてるんだよ……」
「全く、甲夜はどうしてそんなにここが嫌なのよ。まだどんなところなのか、どんな人なのかもわからないのに……」
彼が特定の場所にここまで拒絶反応を示すのを玲花は見たことがなかったので、不思議で仕方なかった。
「僕にもよくわからないよ。けどすごく嫌な感じがするんだ」
「幽霊が嫌がるお札でも貼ってあるのかしら? 」
「もしお札の効果だったら相当な威力だよこれ……」
後ろにぴったりとくっつく甲夜を見て玲花はため息をついた。
「わかったわ。そんなに嫌ならさっさと用事済ませてここから離れてあげるから。それまでは大人しくしているのよ」
「ごめんよ……決して君のおつかいを邪魔したいわけじゃないんだ」
「わかってるわよ」
玲花は表札横にあるインターホンを鳴らした。
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