X-50話 鳥の目線

 俺は一体何をしたんだろうか。そんな疑問が不意に湧いてはそれを頭を振ることでかき消していく。目の前、いや目の上ら辺を羽を靡かせながら飛んでいるカラスの後をついて行き、本当に信頼していいんだろうかと思ってしまう自分がいた。


「もう着くぞ」


そんな不安を感じ取られたのだろうか。カラスはこちらに赤い目を向けると嘴を器用に動かしながら人の言葉を操った。それに対して、分かったとだけ返事を返すと俺は再び黙って同様の思考を繰り返すのであった。


 太陽の光によって生み出される影と全く同じ色をした鳥はある程度飛翔してから、焼け野原とかした医療場の木材の焼き後に器用に捕まって停止する。そして、羽を自らの嘴で毛繕いすると、こちらをじっと見つめる。


「ここにそれがあるのか?」


尋ねる質問に鳥は何も話さない。もしかして、ここからは自分で探せということなのだろうか。そう思い、周りを見渡してみる。うん、何もない。先ほどよりも建物群が増えたがそのどれもがすでに灰と化している。より視界が悪くなったといっても過言ではないだろう。この状態でどこを探せばいいというのだろうか。


「人は鳥を見るとき視界を上にあげる必要がある。当然だな、私たちは羽を使って空を生活のエリアとしているからだ。しかし、それは時折上から見下ろされているといった、勝手な悪印象を与えることにもなる。だが、逆はどうだ。鳥が人を見るときどの様にしなければならない。そして、鳥になりたいと思った人は、羽がない人間はどの様にしてそれを克服したのか、よく考えてみれば答えは自ずと出るじゃろう」


 それだけ残してあとはカァーカァーとだけ鳴くだけで質問に答えてくれることはなかった。そして、しばらくした後に何かを思い出したかのようにその鳥は遥か上空に向けて飛び立っていった。

 

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