魔王子様の世直し

J

第1話 世界の終わりと始まり

 世界が突然、謎の崩壊を始める すでにすべての人が諦めているようだ。

なにせ地球どころか宇宙でも崩壊が始まっているらしい。

らしい というのは自分で見たわけでもないし学者でも科学者でもなんにもわからかったのに

ただの一般人であるボクにわかるわけがないのだ。


 つまりボクもすでにあきらめの境地だ。

今はただ穏やかに最後を迎えようと一人でいる。

世界最後の時に誰とも一緒にいわれないとはなんともさみしい人生だった。


 両親は既に他界。

年の離れた妹がいるが友人と外国にいってる間に世界の崩壊が始まり今では連絡も取れない。

無事で・・・いや無事だったとしても世界が終わるのでどっちみち無事ではいられないのだが

せめて自分と同じように穏やかに最期を迎えてほしいと思う。


 世界の終わりが目前にまで迫ったようだ。

もしも生まれ変わることができるならこんな一人で終わりを迎えるようなさみしい人生ではなく


「たくさんの人に愛される幸せな人生だといいな・・・」


 そうつぶやいたあと白い光に包まれ世界が終わっ・・・た?

あれ?


「ここ、どこだ?」


 世界が終わる前までいたのは自宅。

今いるのは綺麗な青空の下、草原の上。

ボク以外に人は・・・いた。

目の前に14~15歳の少女がいた。

なかなかの美少女だけどなんかおかしな格好だな・・・知らない子だし。


「おぬしの願いかなえよう!」


 へ?


「化け物とかいる世界だけどな!」

 

 なんだって?ぱーどぅ~ん


「ちなみにここはわかりやすく言えば神の世界。あるいは死後の世界じゃな」


「ああ。やっぱり死んだのか・・・ボク。それでここが神の世界なら君はもしかして?」


「そう、私は神様じゃ。女神様じゃ。美人じゃろ?ホレるなよ?ナハハハハ」


 なんとも見た目と言動にギャップのある神様だ。

普通なら信じないとこだけど・・・。


「で。先ほど私の願いを叶えてくれると言ってましたが詳しくお聞きしても?」


「お、あっさり受け入れたのう。妙に冷静じゃし」


 まぁ世界の崩壊なんて目にしちゃいましたし。

それに不思議とこの子の言うことは嘘じゃないとわかる。神様だからだろうか?

そして見た目が少女だけど神様だとわかると敬語になるボク。


「まあ良い。では説明しよう。まずおぬしがいた世界じゃがな、あれは次元の寿命が終わりを迎えたのじゃ。神でもどうしようもないの」


  え 次元に寿命とかあるんだ・・・。

 神様にもどうしようもないなら人間にゃなにもできないだろうな・・・。


「それで、じゃ。一つの次元が死ぬということはその次元にいるすべての生命が死ぬということ。そこで神が救える魂はすくって別の次元に転生させてやるのじゃ。全てを救うことはできんが見捨てるにはあまりに膨大な数の生命なのでな」 


 なるほどなるほど。ボクは運よく選ばれたようだ。


「そしてさっきは願いを叶えると言ったが正確にはチャンスをやる、じゃな。幸せな人生を送れるかはおぬし次第じゃ」


「化け物がいる世界とか言ってましたけど・・・」


 化け物がいる世界で幸せになるってハードル高そう。とゆうか無理じゃない?それ無理じゃない?

転生させてもらえるのはありがたいけどすぐ死んじゃうようなハードな世界は困ってしまう。 


「うむ。その転生先の次元、世界はおぬしがいた世界と非常によく似ておるが色々と違ってもいる。化け物がいると聞いて不安になるじゃろうがおぬしがいた世界の人間の魂はその世界の人間の魂より高位の存在になる。わかりやすく言うとその世界においては類まれな才能を持って生まれることになるじゃろう」


 それは・・・いいことなんだろうな。少し希望が持てる気がする。

お?なんか体が光ってる?いや光が体を包んでる? 


「まあ他にも色々気になることがあるじゃろうがそろそろ時間じゃ。ではな」

「あ、待ってください!妹はどうなったのか教えてもらえませんか?」 


転生先の不安はまだ消えないがそれよりも妹が気になる。


「すまんがわからぬな。転生させるのに問題がない魂で運がよければ他の神に拾われて同じように転生されるじゃろう。だが同じ次元に転生されるとも限らん。むしろ別の次元の可能性が高いじゃろう。可能性がないとは言わんがな。」


 そうか・・・もう妹には会えないのか。可能性がないわけではないようだが。

どうか同じく転生して幸せになってほしい。


「では時間じゃ。よい人生を送れるよう努力するがよい」


その言葉を最後に視界は再び真っ白になり・・・








 赤ん坊の泣き声が聞こえる。

その泣き声が自分の泣き声だと気づくのに時間はかからなかった。

どうやら無事に転生したらしい。


 しかも前世の記憶を引き継いでいるようだ。生まれたての赤ん坊なのに昔の記憶がある。

転生だからだろうか?それとも高位の魂ゆえだろうか?

とゆうかその当たりの説明もちゃんとしてくださいよ神様・・・。


 赤ん坊ゆえか自意識があっても泣きやむことができない。

目も閉じたままだ。赤ん坊って生まれてどのくらいで目をあけるんだろう?

前世では結婚もできず子供ももちろんいなかったのでそのあたりの知識は乏しい。

友人の子供が生まれて数日後に見にいったときには開いていたように思うのだが・・・


 声が聞こえてきた。

状況から考えて両親か医師、助産婦あたりだろう。


「無事に生まれたようだな。男の子か。よくやったなエリザ」


「元気な子で安心したわ。私に似てる気がしない?」


「そうか?わしじゃないか?かわいいし」


「いいえ私よ。かわいいし」


「わし似だろ?」


「私よ」


 などと早くも親バカな会話が聞こえてくる。

どうやら新しい両親は前世の世界でニュースにでてくるような幼児虐待をするような人ではなさそうだ。とりあえずホっとする。


 しかしエリザ? 母の名前のようだが日本人じゃないのかな?

と、思ったがよくよく考えればここは別次元の世界。

前の世界と似てはいるが違ってもいると神様も言っていた。ならば前世の世界の常識で考えに縛られるのはよくないかもな。

でも日本語だよね、これ。ちゃんと理解できるし…

あ、目を開けれそう。


 ゆっくりと目を開けていくと目の前には…


「お、目を開けたぞ」


「あらほんと。ちゃんと見えるのかしら」


 母親とおぼしき人物はいい。多少、普通より耳がとがっているように見えるが黒髪で妖艶な美人といった感じだ。それはいいのだ。

問題は父親とおぼしき人物だ。


「パパだぞ~」


「ママよ~」


 パパと名乗ったその人物


「なんか固まっとるな?」


「あなたを見てるわね」


 金髪で強面な巨漢。若いころのシュワちゃんて感じだ。そこまではいい。


 だが


 角

 角が生えとる…。


「オギャーーーーー!!!!!」


 なんじゃこりゃあああああああ! 

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