街の空気は窮屈で


 ひとりの私を不安にさせる


 目に映るすべての人たちが


 守るべきもの


 掛け替えのないもの


 私が持っていないものを


 すべて手にしているような気がして


 どんどん自分が惨めに思えてきて


 変えたい


 変わりたい


 そう思っても


 結局 私は私で


 変わるはずがない


 その悲しい結論に


 耐えられず


 不安になる


 泣き出したくなる


 本当の私は私の奥のほうに置いて


 ハリボテのような


 薄っぺらくて頑丈な


 作り笑いの得意な嘘の私を盾にして身を守る


 本当の私は


 小さな暗い部屋で蹲って


 誰かが扉を開けてくれるのを待っている


 内側からしか開かない


 鍵のかかっていない扉の前で


 それが分かっているのに


 小さな、暗い部屋の中で


 救いを求めながら


 本当の私はいつだって泣いている

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