空のとびかた


 あしもとで蟹が泣いていた。

 「どうしたの」って聞くと、

 小さな声で「飛べないの」って言うの。


 「蟹が飛べないのは当たり前じゃない」って諭したら、大きなハサミでつつかれてとても痛かったわ。


 「僕が飛んだっていいじゃないか」

 蟹は泡で一杯になりながら、私を睨むの。


 挟まれるのが嫌だったから、

 「ごめんなさい、あなたならきっとできるわ」

 蟹はこれ以上ないくらいに目玉を突き出して喜んだわ。


 「蟹さんはりっぱなハサミがあるのに飛ぶ事もできるなんて不公平でしょ、だからみんな羨ましがって黙ってたのよ」

 やっぱりそんなことだろうと思ったよ、そう言って蟹は大きな木にのぼりだしたの。


 よいしょ、よいしょと一生懸命に頑張って、てっぺんにあがったわ。

 「見てろよー」

 蟹は大きなハサミを精一杯広げて、木の上から飛び降りたの。


 ぺちゃ



 「ほら、やっぱり飛べないじゃない」

 蟹のお墓を作ってから、私は家に帰った。

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