第69話 パーティークラッシャー・三発目

「ごめんなさい。メリアン。トビアスさんの話が面白かったから」

ホリーさんが言った。


「しょうがないだろ。

だいたいメリアンだって、『暁の狼』時代、僕の言うことをよく無視してたじゃないか」

僕は言った。ちょっとスッキリしたぞ。


メリアンはしばらくブツブツ言っていたが、続きを話し出した。



「女性のいるパーティーと言うことで、『銀弓と金盾』に入ったのは良かったんだけど、もう、始めからトラブル続きだったのよ。

リーダーの金盾さんが、やたら絡んで来るし。

冗談めかして、2人で旅に出ようとか言ってくるのよ」


「金盾は女好きだったからな。

合同パーティー組んだ時も、別パーティーの女性冒険者に、いろいろ声をかけてたぞ」

トビアスさんは言った。



「わたしはなるべく銀弓さんの側にいようと思ったんだけど。

彼女、すっごい意地悪なの!」

メリアンが言う。


「銀弓はなぁ、要は金盾に惚れてる。その上焼きもち焼きだ。

多分、メリアンを追い出したたかったんだろう」

トビアスさんが解説する。


「でも、わたしは次のあてもなかったし、しばらく頑張ろうと思ったの。

仕方ないから、わたしはキャンプの時は、パーティーの隅で静かにしていた。

でも、2人がわたしをパーティーに置いておくかどうかで喧嘩を始めて……、2人以外のメンバーもわたしのことをトラブルメーカーみたいに見だして……」

メリアンは続ける。かなり悔しそうだ。


それが本当なら、トラブルメーカーのメリアンとは言え、気の毒だと思う。



「銀弓と金盾の喧嘩はいつものことだ。

それでも、喧嘩の回数がさらに増えれば、パーティーの連中もうんざりだろうな」

トビアスさん。


「銀弓さんと金盾さん、2人の関係をわたしが邪魔したって言うの?

でも、わたし何もしてないわ。

どうしろって言うのよ!」

メリアンの目には涙が浮かんでいる。



「この場合は、『銀弓と金盾』に入ったのがそもそもの間違いです」

ミシェルさんが冷静に言った。


「つまり、私が悪いって言いたいのね?」

メリアンは言う。


「いいえ。ロイメの法において、メリアンさんに責任はありません。

冒険者の慣例においても、パーティーに入れた、リーダーの責任です。

ただし、メリアンさんが、女性冒険者として成功したいなら、用心深くなる必要はあります」

ミシェルさんが答えた。



「銀弓と金盾は、なぜそんなに喧嘩ばかりしているのに、組んでいるんでしょうね?」

ホリーさんが言う。


「冒険のパートナーとしては、良いコンビだからだな。

要は2人で組んだ方が稼げるんだ。

その上で、銀弓は、金盾に惚れてるから、公私ともにパートナーになりたい。

一方で、金盾は、その気がない」

トビアスさんが言った。


「メリアン以上のトラブルメーカー・パーティーですね……」

僕は言う。メンバーが居着かないはずだ。


「そう言うわけだ。次に生かすために反省はした方が良いが、『銀弓と金盾』に必要以上に責任を感じることもない。

その後はどうなったんだ?メリアン?」

トビアスさんは、メリアンに聞く。


「もうこんなパーティー耐えられないって、銀弓さん金盾さんとわたし以外のメンバーが、いなくなってしまったわ!」


これが、パーティークラッシャー三発目か。



「大変だったわね、メリアン。頑張ったと思うわよ」

ホリーさんは言った。


まあ、メリアンは頑張ったんだろう。頑張る方向が間違っていた気はするけど。



しかし、ここまで聞いた範囲だと、パーティークラッシャー三発目がそこまで問題になるとは思えない。

『銀弓と金盾』はもともと問題があるパーティーみたいだし。



「メリアンは、まだ『銀弓と金盾』にいたわけ?」

僕は聞いてみる。


「次のパーティーは探してたわよ」


ふむ。


「その時、同じクランの別のパーティーから、うちに来ないかって誘いがあったのよ」


「その誘いを受けたと」

僕は確認する。


「当たり前でしょ」

メリアンは答える。

まあ、その状態で誘われたら受けるよな。


ただ、パーティーメンバーの引き抜きでは、トラブルが発やすい。

特に同じクラン内の顔見知り同士で、拗れると厄介だ。


「円満退団できましたか?」

ミシェルさんが聞く。


「銀弓さんには、とっとと出て行けって言われたわ。金盾さんには少しだけ引き止められたけど」

まあ、ギリギリ円満退団、なのかなぁ?



「それで、メリアンはどこのパーティーに移籍したんだ?」


「……『輝ける闇』ってパーティー」

メリアンは言った。



『輝ける闇』は、しばらく前に買い物の途中で会った。所謂いわゆるハーレムパーティーである。


なんか、ここにもトラブルの種がある気がする……。

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