第30話 初秋の候



農夫は家の窓から空を眺める


曇り空

玄関に出て長靴を履くが

暫く思案に暮れる


その背中を彼の妻が見ている

少し微笑んでいたのかもしれない


やがて彼が立ち上がると

妻は彼の背後に立ち

ポンと肩を叩く

農夫は振り返りもせず頷き

外へ出てトラックに農具を積み込むが

その思案顔は変わらない


エンジン音を残して家を出る


9月の取り入れどきの柿は収穫され

柿の木は上の枝に一つ二つの実を残しているだけ

短い秋が過ぎる頃の小鳥への贈り物

下の方の枝には何も無く

旅人へのささやかな贈り物も今では必要無い


農夫は農具を下ろしながら空を見上げて呟く


雨にならなければいいがと

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