第6話 少しだけ重い荷物



野営の為の荷物を二輪に積んでいく

スタンドを上げシートに跨ると

ズシリと車体が沈む

いつもの何倍もの荷重がかかっている事が分かる

エンジンを掛けると軽快な回転音が聞こえる

スロットルを回すと軽快な回転音が重厚な音に変わる


そう 私は知っている


野営地に着き設営を始める

2輪がホッとした様な顔をしたかのように見える

重い荷物から逃れられた長い道のり


私は知っている


バックパックに必要な物を入れ

麓から見える眼前の山を眺める

気の遠くなるような道のりだ

然し そこへ行けば渓流があり

怒涛の如く水を落とす滝があるかも知れない

名前も知らない美しい花に出会えるかも知れない

真昼だというのに光は木々に遮られて

少し暗い大地で木漏れ日を浴びながら深呼吸をする

そうすれば この気持ちも少しは楽になれそうな気もする


私は知っていたのだ


いつも旅で一番厄介な荷物は私自身だと

この重い荷物を心に背負って

また一歩と歩き出す

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る