第49話 はじまりは今
『コラ…ガキ共…』
悪修羅嬢王緋薙豹那は声に凄みをきかせにらみつけた。
玲璃は思わず1歩下がった。
今にも襲いかからんという鋭い視線を向けられている。
『…まさかとは思うけど、もうバテたなんて言うつもりかい?』
豹那の声は殺気立っている。すぐにでも手が出そうだ。
『ぎゃ、逆にあんたは平気なのかよ…』
玲璃は汗びっしょりになりながらひざを着き、そのまま倒れてしまった。
『ちっ…ったく、だらしないったらないねぇ暴走愛努流。これしきでくたばっといてアイドルとは…いいかい?お前ら。アイドル舐めてんじゃないよ!!』
実は今年の高校の文化祭で、愛羽たちは歌とダンスをやることになったのだが、その指導者に豹那が抜擢されたのだ。
豹那も最初は断っていたが、もうどうしてもという蓮華と愛羽の熱烈なオファーに、どんな心変わりがあったのかは謎であるが決めた途端6人にダンスの基礎からとにかくみっちり1から10まで細かく叩きこむように教えこんでいた。
そのあまりのスパルタ調教に6人は日々休む間もなくムチを打たれ続けた。
『…ちぇっ、くそったれ。おい愛羽、なんであいつに頼んじまったんだよ』
『おい玲璃。文句があるならこっち来て言え』
『はいっ!何も言ってませんでした!』
『…俺、バンドなんだけどな…』
『麗桜。まだぐずぐず言ってやがるのかい?』
『いえ!アーティストたる者バンドも踊りも一緒っす!』
『よし、いいだろう。よく言った。蘭菜と風雅を見てごらんよ。何一つ文句言わずちゃんとついて来てるじゃないか』
元々文句を言う方ではない2人はよく誉められた。
『豹那さん』
『ん?』
『さっきのとこのこの動き、あたし変じゃないかな?』
愛羽は自分のダンスで気になる所があるらしく、その部分を踊りながら豹那に言葉を求めた。
『…とりあえず先生には敬語ってもんを使おうか。んで、そうだねぇ。あんたはこの動きの時にさ……』
愛羽は元々自分がやりたいと思っていたことなので毎日が楽しくて仕方がなかった。なので豹那のこともよく聞いたし、自分からもどんどん聞いていった。
『蓮華。そんなとこで休んでないで愛羽に教えてやってくれよ』
『は~い』
そんな毎日が楽しいのは蓮華も一緒だった。
『蓮華、あんた本っっ当に太ったね』
『ちょっ、豹那さんひどい!そんな改めて言わなくてもいいのに…分かってるもん…太ったもん…』
泣きそうな蓮華を愛羽がフォローする。
『でも蓮ちゃんFカップだよ』
『ほーう。1個負けたな』
『え!?豹那さんEカップ?』
『まぁね』
『いいなぁ~、みんな大きくて』
愛羽の胸はきっとおそらくまだまだこれからだろう。多分…
『夏休みが終わったらこんなに毎日集中して練習なんてできないんだからね。今が勝負なんだよ?分かってるかい、お前たち』
『はい!』
愛羽たちは声を揃えて先生豹那に向き直った。
『よし。じゃあとりあえず最後に1回通して今日は終わり。はい、やるよー』
彼女たちの物語は今始まったばかりだ
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