電気ケトルの話

 フォロワーさんの電気ケトルのエッセイをふたつ続けて読んだものだから、私も真似をしてうちの電気ケトルのお話をする。



 うちにある電気ケトルに名前はない。ほかにヤカンもなければ急須もないので唯一無二の存在なのだ。よっ電気ケトル!働き者!

 

 今住んでいる家に越してくるまで、家主は蛮族であったので文明の利器に疎い生活をしていた。この電気ケトルは家主の友人からのクリスマスプレゼント兼引越し祝いで家主のもとに贈られたものだった。家主は蛮族であったので電気ケトルを初めて目にして、その偉大さ便利さがわからず電気ケトルの入っていた頑丈な箱を手に取り「これはいい箱だね」と言い友人の目を丸くさせ、友人も友人で「この家には鏡がないからこの電気ケトルを鏡の代わりに顔を映すといいよ」と言っていた。

 ※電気ケトルの良さが分かってから友人には改めてお礼を言いました。


 この電気ケトルは銀色で胴体についた取っ手と蓋のポッチが黒いだけの至ってシンプルな容姿をしている。コンセントのついた土台部分が凸の形にとんがっていてケトル部分が凹んでいてそこを合体させると通電する仕組みだ。土台部分は水濡れに強く、なんに関してもいいかげんな家主が毎日使い続けてもいつもと変わりなくお湯を沸かし続けてくれる。

 家主はもしかしたら人より多く飲料を飲むかもしれない(一日に4リットルは飲料を飲む)ため、もしかしたらこの電気ケトルは大変な働き者なのかもしれない。容量は600mlだ。

 肌寒い季節になってからというもの、電気ケトルはただひたすらに身を粉にして、家主がジャスミン茶のティーバッグを放り込んだカップに給湯し続けている。いい子だね。いつもありがとう。

 土台部分から生えるコンセントのケーブルもいい感じに長いため、電源を挿したままのある程度の移動が可能で、春先は庭のナメクジ退治に大量のお湯を沸かして役立ってくれる。電気ケトルもまさかナメクジを茹でる湯沸しに使われるとは思ってなかったろう。ごめんね。


 ヤマもなくオチもない、うちの電気ケトルの話。

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