夢の話 赤いハンバーグ

 ここはとある民宿だ。これといって和風でも古き良き建物でもない、鉄筋コンクリートの3階建てだ。元は大家族で部屋数が無駄にあるものだからもったいないということで部屋を格安で貸している。

 そして私はそこの娘だった。これはこの民宿でのひと夏の物語である。



 みんなでテーブルを囲んでた。

 弟と父と母と見知らぬ女性と。女性が焼いたという厚みのあるハンバーグが食卓に並んでいた。一見美味しそうだったけど、箸で割ったら中身がレア過ぎてほぼ生肉だった。

 私たち家族は火が通っていない食べ物は食べられないタチだったので驚いて、私は家族たちから慌てて皿を奪った。


「これ生じゃん!こんなの人間の食べ物じゃないよ!危ない。焼き直してくるね!」


 勢いで言い過ぎたかもしれない。既に口から言葉は吐き出されていて、あっ…と思って顔を向けた時には女性はもう涙目だった。

 家族たちも私を責める態度だ。うっ…となり、「いやいくらなんでもこんな赤いの食べたらお腹壊すでしょ…」と思ったし、私はバカ正直なので思ったままに言ったら女性は泣いた。『泣いたらいいと思いやがってクソがよ…。生肉食べて無事な人間は運がいいだけなんだよ…』と私は内心で毒づいた。今度はちゃんと内心だったはずだ。


 キッチンのある階下へ降りていくと、ベランダへ出るためのドアが開いていた。ベランダを覗くと、友人である月村と石狩の姿がある。


「二人共!来てたなら連絡してよ!」


と大喜びで二人とハグをした。生焼けのハンバーグには待っていてもらおう。月村と石狩はそれぞれ長身で壮年の男性で、私とはずいぶん前からの知り合いで友人だ。それは気心の知れた友人で同じ部屋に住み同じ飯を食い同じ風呂に入り同じ布団で寝た仲である。お前はどんな交友関係なんだ?と聞かれたらあさってに目をそらす仲だ。


そうやって彼らと話し込んでハンバーグは乾き、家族は飢えた。私は友人達とディナーに洒落込んだ。





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