真夏の積乱雲
筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36
(一)
私と彼との関係に初めて暗雲が立ちこめ始めたのは、山手線から五反田駅のホームに降りた際に、彼を見つけたときだった。
いつもなら声をかけるところだった。でも今日は違った。職場の友人たちと一緒に五反田駅の近くに新しくできた和食の創作料理の店に行くところだったからだ。
でも声をかけられなかった本当の理由は、そこじゃない。もう一つ別の理由があった。
それは、彼の腕にカワイイ女の子がしがみついていたからだ。
高校生か、それとも大学生か。身長は一五〇センチもないくらい。襟のついたガーリーな白いシャツ、裾にフリルをあしらった黒のスカートと、毛先を切りそろえたショートボブが似合っていた。彼の腕にしがみつきながら彼の顔を上目遣いにまっすぐ見る、無邪気な満面の笑みがかわいらしかった。私が男なら一瞬で恋に落ちるに違いない。
(続く)
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