第9話 魔法を習得する
ついに俺は魔法を習得する時が来たのだ...!
かつて中二病を通ってきた男子ならだれもが憧れたあの力を本当に手に入れられる日が来ようとは...俺は痛々しい発言や行動をとるタイプの中二病ではなかったが、あの頃は確かに自分なら何でもできるし特別な力を得ることだってできると思っていたな。
...まあそんな幻想はすぐに打ち砕かれたが。
そんなことは置いておいて、早速魔法の習得を始めよう!!
まずは基本四属性の初級から挑戦してみることにする。常識提供さんが様々な教えてくれた魔法のうち、部屋でも出来そうだった火属性初級の『トーチ』という魔法をまずはやってみる。
この魔法は光源を作り出す魔法で、手のひらの上にろうそくの火のような形の光源を出現させるらしい。火属性という分類だがこの魔法自体は炎ではなく、あくまで光源なので部屋で使用しても燃えたりしないとのことだ。
これ...どちらかと言えば光属性みたいな魔法なんだけど、おそらくこの世界には光属性という分類がないから火属性ということになっているのかもね。
まずは魔力を操って手に集中させる。そしてろうそくの炎をイメージしてこう唱える。
『炎よ 辺りを照らせ トーチ』
すると手のひらにろうそくの炎のような光が出現する。その炎は全く熱くなく、それなのに本物の炎のようにゆらゆらと揺らいでいる。光源としての性能は自分を中心とした半径1mほどを照らす程度のものだった。おそらく使用する魔力をもっと増やせばもっと広いエリアを照らせるだろう。
《熟練度が一定に達しました。スキル『火属性魔法』を習得しました》
これで火属性魔法のスキルを手に入れることが出来たらしい。スキルが手に入るとレベルに応じて消費魔力が軽減したり、同じ魔力でも威力や効果が上がったりするらしい。つまりスキルのレベルが上がると魔法のコスパがよくなるということか。
では続いて水属性も挑戦してみるか...
──俺はこの後、水・風・土・闇・聖といったすべての属性魔法を試し、そしてすべてのスキルを取得することに成功した。
先に常識提供さんに聞いていたのだが、魔法というのは使い手によって属性ごとに得意不得意が存在しており、不得意な属性に関しては発動できないといったことが多いのだそうだ。
しかしごく稀にオールラウンダーと呼ばれる全属性すべてを使いこなすことが出来る人もいるそうなのだが、その者たちはいわゆる器用貧乏といった感じですべての属性で簡単な魔法しか使えないことが多いそうだ。
つまりは全属性が使えるようになった俺はそれに該当するのかもしれない...
まあ前世から器用貧乏だったから認めるしかないけれど、せめてここでは一分野を突き詰める
何にだって例外は存在するわけだし、全属性極めてやるか!!!
よしっ、最後は無属性をやってみるか。
無属性は例外属性という分類で基本属性と特殊属性のどの属性にも当てはまらないものがすべて無属性と呼ばれているらしい。言ってしまえばこの分類はいわゆる「その他」だ。ちなみに無属性という呼び方は俗称で様々な区分の魔法を一括りにそう呼んでいるらしい。
しかしこの無属性魔法というのは非常に面白くて、強化魔法や付与魔法などといった支援系の魔法や時空間魔法や重力魔法などの強力な魔法もここに分類されている。
正直、どの属性よりも無属性の魔法を極めてみたいという想いが強い。
ということで室内でも使えて効果が分かりやすい無属性魔法は何かあるかな~と常識提供さんに聞いてみる。教えてくれた魔法の中でよさそうだったのが『身体強化魔法』だ。
これは読んで字の如く自身の体を強化して身体能力を底上げするという魔法だ。魔法の効果中はステータスにも変化がちゃんと現れるので無属性魔法の効果を確かめるには非常に分かりやすい魔法というわけだ。
早速だが身体強化魔法を発動してみる。
無属性魔法は他の属性とは違って詠唱を必要としないらしい。この魔法の場合は魔力操作を習得した時のように魔力を心臓から全身に送り出すイメージで体中のありとあらゆる細胞に魔力を行き渡らせるようにする。すると流した魔力の量に応じて身体能力が向上するのだそうだ。
詠唱に関しては他の属性でも練習すれば無詠唱で魔法を発動することも可能らしい。けれど詠唱するのとしないのとでは長所と短所が存在しているようだ。詠唱ありだと発動までに時間はかかるがイメージがしっかりと固定されて魔法の効果や威力が上がり、詠唱なしだと発動までが早いがイメージが不安定で詠唱ありと比べて魔法の効果や威力が下がるといった感じらしい。
《熟練度が一定に達しました。スキル『強化魔法』を取得しました》
よしっ、身体強化は上手く出来たみたいだな。でも正直あまり実感としては室内だと変化が分かりにくいな。どれくらいの変化が出ているのかを確かめるためにもステータスを開いて見てみることにしますか。
=========================
名前:ユウト Lv.2
種族:人族
HP:310 / 310
MP:403 / 460
攻撃力:143(+13)
防御力:132(+12)
俊敏性:116(+11)
知力:100
運:150
残りステータスポイント:40
称号:
女神の寵愛を受けし者 世界を渡りし者 研鑽を極めし者
スキル:
剣術Lv.5 体術Lv.5 料理Lv.4 気配遮断Lv.8 ストレス耐性Lv.7 精神攻撃耐性Lv.6 鑑定Lv.10 魔力操作Lv.2 火属性魔法Lv.1 水属性魔法Lv.1 風属性魔法Lv.1 土属性魔法Lv.1 闇属性魔法Lv.1 聖属性魔法Lv.1 強化魔法Lv.1 ステータス偽装 超理解 幸運 多言語理解 インベントリ 健康体 常識提供
=========================
いや~、スキルの数めちゃくちゃ増えましたね...
って今はそこじゃなくて能力値のところを見なくては。
今は装備を着ていない状態だからこの補正値はすべて身体強化の影響のようだ。おそらく現状だと総MPの1割を消費すると能力値が1割上昇するという効果のようだ。
見た感じ身体強化魔法は能力値を"固定値"ではなく"割合"で上昇させるタイプだろう。ということは俺が今後もっとレベルを上げて基礎能力値が大きくなればなるほど身体強化で上昇する量が増えるというわけだ。これはもはや戦闘には必須レベルの魔法じゃないのだろうか。
しかし今も継続的にMPが少しずつ減っているので、おそらく身体強化を使い続けているとその分MPが継続して減っていくというようだ。強力な魔法にはそれなりの代償があるということか。現状だと、戦闘になればおそらくMPの余裕を考えて3割程度の身体強化なら大丈夫だろう。
もちろんこの強化魔法も他の魔法スキルと同様にスキルレベルがもっと上がれば消費魔力も抑えられコスパがよくなるので、このスキルは優先的にレベルを上げる必要があるだろうな。
ふと窓の外を見るとすっかりと日が沈んで町がまるで眠っているような静寂に包まれていた。どうやら魔法の習得に集中しすぎてかなりの時間が経過していたようだ。
とりあえず無属性魔法も使えるということが確認できたので今日のところはこれで終わりにしておこう。今日は慣れない世界でいろんなことがあったからな。あまり無理をしすぎると体調を崩してしまうかもしれないし、それに休めるときに休んでおかないと。
俺はすぐにベッドで横になる。何だか久しぶりな気がするベッドのぬくもりを感じていると緊張が解けたのか一気に眠気が襲ってきた。
俺は最後の力を振り絞って机の上にあるランプの土台にもう一度触れて明かりを消すと、そのまま気絶するかのように眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます