第6話 装備屋でお買い物
ここが装備屋か。
俺は町の中央通りから少し外れたところにある一軒家に到着した。ここはレイナさん曰く、初心者冒険者にオススメのお店らしい。
どういうところが具体的にオススメなのかは分からないが、おそらく冒険者になりたての人にオススメということはおそらくお安いということなのではないだろうかと推測している。もしそうなら非常にありがたい話だ。なんせ今の所持金は銀貨1枚と銅貨20枚しかないのだから...
とりあえず俺は装備を揃えるためにお店の中へと足を踏み入れる。
「いらっしゃいませ〜!」
お店の中に入ると元気のいい店員さんの声が響き渡る。その店員さんはレイナさんと同じぐらいの年の女性で綺麗な赤髪でポニーテールをしており、服装は白いシャツに薄茶色のズボンというラフめな格好に赤いエプロンをしていた。
お店のカウンターで座っているその女性の後ろにはバックヤードへと続く暖簾で塞がれた通路があり、その奥からはカーン、カーンと金属をたたく音が聞こえてくる。
「何かお探しでしょうか?」
「実は先ほど冒険者になったばかりなので装備を買いに来たんですけど何かいいものありますか?出来るだけ安いものだとありがたいのですが...」
分かりました!と元気に返事をしたと思うとすぐにお店のバックヤードに消えていってしまった。たぶん装備を用意してくれているんだろうと思うのでしばらくお店の商品を見ていることにした。
様々な武器や防具などが並べられており、その光景はなかなかに迫力がある。少し気になったのでお店に並べられた武器や防具に鑑定をかけていった。すると装備の等級にステータス補正値など様々な情報が目の前のウィンドウに表示された。
常識提供さんによると等級とはその装備の質を表すもので『Fー』~『S+』まで存在しているようだ。等級によって装備することによって得られるステータス補正値や耐久値などが変わってくるらしい。
またその他にも属性を付与された属性装備やスキルを保有している特殊剣と呼ばれるものも存在しているようだ。俗にいう魔剣や聖剣などはこの特殊剣に該当するらしい。
「お待たせしました!こちらがお客さんにオススメの装備一式です!!」
バックヤードに行っていた店員さんが帰ってきた。それにもう一人、俺と背丈が同じくらいの赤髪の青年が沢山の装備を抱えて女性店員さんの後ろからついてきた。カウンターには胴体や腕、足の装備にナイフより少々大きめの武器と腰につけるバッグの計5点セットが並べられた。鑑定をしてみるとナイフ以外はF+ランク、ナイフはFランクであった。まあ初心者ならこれぐらいがちょうど良いのかもしれないな。
「ちなみにこれ一式でお値段はどのくらいですか?」
「これ一式セットで銀貨2枚になります!!」
あー、少し予算オーバーだ。
予算的に今の俺には銀貨1枚までしか払うことはできない。
「...すみません、予算が銀貨1枚なのでこの中でその金額で買えるものってありますか?」
「...だって。どうするヴェル?」
その女性店員は少し考える素振りを見せてから隣にいる赤髪の青年に尋ねる。もしかしてこの青年がこのお店の店主なのかな?でもそれにしては若すぎる気もするけど、この世界じゃそういうものなのかな。
その青年は少しの間考えていたが、しばらくして顎に手を添えながら俺に質問をしてきた。
「お客さん、冒険者になったばっかりなんだよな?」
「えっ、はい。つい先ほどギルドで登録してきたばかりです」
「ん......よしっ!じゃあこれ全部で銀貨1枚でどうだ!!」
「えっ...?いいんですか!?」
武器だけでも買えてら良いなと思っていたら全部セットが驚愕の50%OFFになってしまった。一体どういうことなのだろう?初来店でしかも冒険者になったばかりのやつにそんな大サービスなんてするか普通...?
その赤髪の青年は俺の少し警戒した雰囲気を感じたのか笑いながら説明をしてくれた。
「いや~、実はその装備って俺が作ったんだわ。おっと、自己紹介がまだだったな。俺はヴェルナ、ここで鍛冶見習いとして働いてるんだがよ、実は修行の一環で作った装備をこんな感じで格安で売ってるって訳なんだ。なんで俺的には今ここであんたに恩を売っておいて、将来俺が一人前になれた時に贔屓にしてくれたら...っていう算段なわけよ」
なるほど、そういうことだったのか。それで女性店員さんはこのヴェルナさんに判断を仰いだという訳ね。...てか恩を売る云々は俺に言わない方がいいんじゃないか?なんかすごく正直な人だな。でも悪い人じゃなさそうだ。
「こらヴェル!恩を売るならそういうのは言ったらダメでしょ!!」
僕が思っていたツッコミを横にいる女性店員さんが代弁してくれた。うん、その通りだよな。頭を思いっきり叩かれたヴェルナさんは何すんだよ!と頭を押さえながら言い返していた。
「すみませんね、こいつ頭は回るやつなんですけど馬鹿正直なやつでして。私はエルナ、このヴェルナの姉なんですが私はこいつよりはしっかりしてるので何かあったら私に言ってくださいね!」
「あ、はい!ありがとうございます!そういうことならぜひ銀貨1枚でお願いします」
毎度あり~!とヴェルナさんが満面の笑みで答えてくれた。俺は銀貨1枚を払って念願の装備を一式手に入れることが出来た。すぐにそれらを装備してみると人生初めての体験だったが意外としっくりきた。ちなみに装備後のステータスはこんな感じになった。
=========================
名前:クロカワ ユウト Lv.1
種族:人族
HP:150 / 150
MP:200 / 200
攻撃力:52(+2)
防御力:57(+7)
俊敏性:80
知力:100
運:150
残りステータスポイント:0
称号:
女神の寵愛を受けし者 世界を渡りし者 研鑽を極めし者
スキル:
剣術Lv.5 体術Lv.5 料理Lv.4 気配遮断Lv.8 ストレス耐性Lv.7
精神攻撃耐性Lv.6 鑑定Lv.10 ステータス偽装 超理解 幸運 多言語理解
インベントリ 健康体 常識提供
=========================
攻撃力が2、防御力が7上昇していた。おそらく左側の数字が最終合計値でカッコ内の数字が装備によってプラスされた数値の内訳のようだ。F等級でこれということは等級が上がればもっとステータスに補正が付くんだろうな。高等級の装備を手に入れることも目標の一つにしよう。
装備も手に入ったわけだし、そろそろ出発しないと日が暮れる前に帰って来れなくなりそうだ。
「ありがとうございました!また来ます!」
「ご贔屓にしてくださいね~!」
「また来いよ~!!!」
俺はお二人に一礼してからお店を後にする。
レイナさんにオススメされて来てみたけど、来てよかった。おそらく他のお店だったら銀貨1枚じゃ十分に装備を揃えることが出来なかっただろうし、何よりまたしてもいい出会いをすることが出来た。やっぱりいい人の繋がりにはいい人がいるんだな。
これで準備も整ったので依頼の場所であるフーリットの森に向かうことにした。先ほどは南側の門から町に入ってきたが、今回の目的地は町から見て東方向にあるため今度は東側にある門から出ることにした。
ここからは片道2~3時間ほどの距離にあるらしい。現在時刻はお昼に差し掛かろうとしているぐらいなので少し急がなければ日没までに町に帰ってくることが出来ないだろう。そこで俺は身体能力の確認もかねて走って森へと向かうことにした。
...あとになって後悔することになるのだが、俺は甘く考えすぎていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます