影法師になりたくて

影法師になりたくて

踏んでみても

変身できなくて

よおく見ても

空を見ても

影法師は足に憑く


同じ形をするクセに

顔は真っ黒で

絵日記を描くときに

簡単そうだと思った


手に取る石ころは

影の中に吸い込まれて

でも投げれるのは

僕だけで


……

影法師になりたくて

顔も手も足も

影になればなくなって

夜に紛れてどこかに行ける


きっと電車だって

タダで乗れて

遠くに遠くにいけるんだ


影法師になりたくて

顔も手も足にも

痛いことがなくなって

泣くも叫ぶもないはずだ


きっと車にだって

隠れて乗れる遠くにいける

知らない場所に行ったなら

……


今日も暗い場所にいる

クローゼットの中

箪笥の中

蓋を閉められた浴槽の中

ベランダの隅

物置の奥底に

僕は影法師になりたくて

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