第八章 魔女陣営 対 エデン
第105話 開戦
現在、既に時間は午後9時を回っている。
しかし、本部内は厳戒体勢が敷かれたままであった。
元々一人暮らしの健流と姫乃は問題無いが、灯里は実家暮らしという事もあり、友人の家に泊まりに行くと両親に行って、同じく本部に詰めていた。
「・・・まだ、何もないね・・・」
灯里がポツリと言った。
「まぁな。すぐに動くかどうかもわからねぇし・・・かと言って気も抜けねぇしなぁ・・・」
健流も頭をボリボリしながら苦い顔をした。
「二人共、今から気を張り続けても疲れちゃうわよ?」
姫乃は、幼い頃より戦っていた事もあり、このような状況に慣れていた為、少しだけ余裕があった。
その時、アンジェリカから呼び出しの電話が掛かってきた。
すぐに執務室に向かう。
すると、その場にはアンジェリカ、クリミア、セルシア、レーアがいた。
「来たね。『神託』が下った。魔女たちはどうやら車を強奪してこちらに向かっているらしい。人数は全部で5人。魔女と黒瀬くん、瀬川くん、それにティアくんと渋谷くんだ。」
「「「「「「!!」」」」」」
全員が息を飲む。
しかし、その時、レーアが疑問を口にした。
「『神託』で、魔女の事が下るのは初めてじゃない?」
それを聞いたアンジェリカは苦虫を噛み潰した表情をした。
「・・・ああ、実は、先日魔女が『神託』に干渉しているという話はしただろう?それを排除したので、もう大丈夫だと思った所に、ティアくんと渋谷くんの事があった。にも関わらず『神託』は無い。おかしいと思って、三上さん経由で確認して貰ったんだ。そしたら、どうも神の精神になんらかの侵食がなされていたらしい。それを三上さんが排除した事で、魔女の行動がわかるようになったみたいだ。今日まで無かったのは、魔女が異界に居たのでわからなかったという事だ。」
アンジェリカの言葉は全員に衝撃を与えた。
魔女が、神にすら干渉する協力者を持っているという事もそうだが、神を治療?できるという龍馬の事もだ。
「・・・スケールが大きすぎてなんと言ったら良いのかわかりませんが・・・その、三上という人は本当に人間なのですか?」
まだ面識の無いセルシアが首を傾げながら言う。
すると、既に面識のある人間は考え込む表情を見せた。
「えっ!?そこ迷うところなんです!?」
「・・・まぁ、種別は人間で間違いない、と思う。」
「・・・」
アンジェリカが代表して答えると、セルシアは微妙な顔をした。
だが、アンジェリカのパンッ!!という柏手で、空気は戻った。
「雑談はここらで終わりだ。私達は、これよりこのメンバーで魔女を迎え撃つ。このままここで迎え打てれば最高なんだが、ここは市街地だ。巻き添えは困る。だから、こちらから襲撃する。奴らは車で移動している。現在もそれは神が把握している。奴らの進路とこちらの位置を考えて、襲撃する場所は・・・」
そこは、愛知県と岐阜県の境界線くらいにある山中だった。
「さて、これよりここにいる全員でヘリに乗って先回りする。残りの者はバックアップだ。他にテロを起こされる可能性も捨てきれない。後詰のメンバーは襲撃地点に向かわせる。いいね?」
アンジェリカの号令により全員が襲撃地点に向かう。
襲撃地点に着き、全員がヘリから降りる。
打ち合わせはヘリの中でしっかりと行った。
「みんな良いかな?これからの魔女との戦いは激戦になるだろう。だが、私も含め全員必ず生き残ろう。そして、その中には、黒瀬くん達や、ティアくん達も含まれる。難しいかもしれないが、なんとか生かして捕らえて欲しい。」
アンジェリカの言葉に全員が頷いた。
「(光・・・充・・・絶対助けてやるからな!!)」
健流の拳に力が入る。
その手を左右から伸びた手が包んだ。
「絶対助けましょうね。」
「大丈夫よ!あたしの勘がそう言ってるもん!!」
「・・・姫乃、灯里、ありがとな!絶対助けるぞ!!」
そんな三人を見て微笑んだ後、レーアとクリミアもお互いに目を合わせる。
「レーア、死ぬなよ?」
「クリミアもね。」
「私は死なないよ。これからもアンジェリカ様に仕えないといけないからな。」
「・・・あなたはブレないわね。でも、そうね。私もこの戦いが終わったら、ちょっとは自分の幸せも考えてみようかしら?心配事もなくなったしね。」
レーアの心配事とは、姫乃の行末の事だった。
健流によって懸念は解消された為、このような発言になったのだ。
「ほう・・・確か、レーアの好みは年下で男らしい子だったな。」
「そうなの!年下なのに男らしいってのがギャップがあって良くない!?出来れば照れ屋が良いわね!!迫ってドギマギしてるところなんて最高!!」
「・・・私もたいがいだと思うが、レーアも結構なものだな・・・」
アンジェリカとセルシアもまた話合っていた。
「長・・・渋谷さんとティアさん・・・絶対に助けましょうね!」
「ああ、君は渋谷くんと同じで、ティアくんに育てられていたからね。君にしてみれば兄と母を助けに行くようなものか。」
「そうですね・・・あるいは、父と母、かもしれません。」
「そうか・・・絶対に助けよう。」
「ええ!」
こうして、30分程たった頃だった。
アンジェリカが突然表情を変えた。
『神託』が下ったのだ。
「来るぞ!!」
道路上を見ると、一台の車が近づいてくる。
他に車は無い。
「クリミア!」
「はい!!」
クリミアの異能、それは『風力操作』だ。
彼女は拳を引き絞り車に振り抜く。
「はっ!!」
すると、砲弾の様な風が、車のボンネットに直撃した。
爆発する車と、中から飛び出してくる人影5つ。
全員着地すると、その中の一人が口を開いた。
「あらあら・・・アンジェリカちゃんじゃないの。お久しぶりね?」
「魔女・・・お前は今日終わらせる。」
「うふふ・・・出来もしないことを言うのも相変わらずねぇ。それに・・・そこにいるのは大和健流くんね?お久しぶり。」
「・・・てめぇ!光と充を返せ!!」
「あら?二人は自分の意思でついて来たのよ?そうでしょう?」
そう魔女が言った時だった。
人影が二人後ろから出てきた。
「久しぶりね健流!会いたかった!!」
「健流・・・」
「光!充!」
「・・・そこにいるのは泥棒猫の姫乃と灯里ね・・・ちょうど良いわ!あなた達を殺して、健流を私に返して貰うわ!!」
「ヒカリ!そんな奴の所にいたら駄目!戻ってきて!!」
「・・・光・・・」
「うるさい!あんた達さえ・・・あんた達さえ来なければ・・・!!健流は私のものだったのに!!!」
憎悪で表情を歪ませ二人を睨む光。
それを辛そうに見る姫乃と灯里。
「充・・・」
「健流・・・」
健流と充は視線を合わせる。
「渋谷さん!ティアさん!!」
「セルシアか・・・悪いな。」
「・・・セルシア、引きなさい。母上を困らせないで。」
「そんな!?」
セルシアは、ティアと渋谷の言葉にショックを受けた。
「・・・相変わらず趣味が悪い。虫唾が走る!!」
アンジェリカが犬歯をむき出しにして叫んだ。
「そうかしら?そういうあなたこそ、どうやってわたくしの行動に気がついたのかしら?」
「誰が言うか!!」
「そう・・・じゃあ始めましょうか!殺し合いを!この辺りを焼け野原にしながらねぇ!!」
魔女が叫んだ時だった。
「そうは行かないよ。」
「!?」
突然の声に魔女が驚く。
しかし、すぐさま全員の足元に巨大な魔法陣が展開された。
そして大きな光が周囲を包む。
光が消えた後には誰もいなかった。
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