2-【次なる魔法】


私の得意な魔法は寝かしつけである。



ベッドでは寝付けない娘だが、リビングのソファで身を寄せ合っていると10分もすれば寝入ってしまう。


だが、たまにはそうとばかりいかないことがあった。



30分経っても寝入る様子が見られない時には、次なる魔法の登場だ。



「ねぇねぇ、ご本読もうか?どの絵本がいい?」


私が娘の顔を覗き込むと、『待ってました!』とはがりに笑顔になるのだから堪らない。



「おーいで!」と言って腕を広げると娘がソファから起き上がり飛びついてくる。


私は柔らかい娘の髪に頬擦りをすると、抱き上げて本棚の前まで連れて行く。




「今日はどれにする?」


「う〜んとねぇ、えっとねぇ、これ!」




娘が選んだのは、お気に入りの一冊だった。


もう数十回は読んでいる。


だが、娘が喜ぶならそれでいい。



「よーし!今夜はこの本にしようね。」


私は再び娘を抱き上げると、お気に入りの絵本と共に寝室へ身を滑り込ませた。

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