第4話 鉄を穿つ者
「これだけあれば十分だな。さっそく加工に取り掛かるぞ。」
マギシは魔法石を手に取ると、コンコンと軽くたたいてみた。
「うーん、これを加工するにはだいぶ力がいるな。」
マギシは近くにあった小石を手に取り、魔法石に軽くぶつけてみた。
「小石よりは丈夫か。今度は鉄と比べてみよう。アックス頼んだ。」
アックスは斧を振り上げると、魔法石に向かって振り下ろした。
すると、魔法石から砕ける音がした。
「なるほど。さすがに鉄よりはもろいようだな。柔軟性もそんなにない。加工するには熱するとか何か特殊な処理が必要なようだ。」
「私の魔法で温めてみる?」
「よし、やってみよう。」
ミリィは手のひらからたき火のようにめらめらと炎を放った。
マギシはミリィの手のひらにそっと魔法石を乗せる。
「これで柔軟性は変わるのか?アックス、もう一度頼む。」
アックスは熱のこもった魔法石に再び斧を入れた。
しかし、魔法石は粉々に砕けてしまった。
「熱してもだめか。それなら逆に冷やして……。」
「ちょっと待って?色んな方法を試していく気?」
「ああ、そのつもりだが。」
「そんなの時間がいくらあっても足りないわ。」
「でも他に方法はないだろう。」
「私の知り合いに鍛冶屋の人がいるから、その人に聞いてみたら何かわかるかもよ?」
「……。」
「どうかしたの?」
「……ミリィって顔広いなって。」
「いやいや、そんなことないって。毎日小顔マッサージして――って、誰の顔が大きいって!?」
「いや、顔が広いってそういう意味じゃねえよ。」
「やーねー!ジョークよジョーク!」
「……。」
「さあ、行くわよ。多分あそこにいるわ。」
マギシとアックスはミリィの後に続いた。
どうやら、この山奥にその鍛冶屋がいるらしい。
魔法石の採掘場からはそんなに離れておらず、そこまで時間はかからなかった。
「ここがカーターさんの家よ。」
ミリィが指をさした先には、小さな木造の一軒家が建っていた。
3人が住めるくらいの大きさの家で、煙突から煙がもくもくと空へ上っていく。
「こんにちはー。」
ミリィは扉を叩いたが、返事はなかった。
「誰もいないんじゃないか?」
「おかしいわねぇ。」
ミリィたちが立ち往生していると、庭の方から声が聞こえた。
「おい!そこに誰かいるのか!?」
すると、庭から一人の老人と、一人の若い女の子がやってきた。
「カーターさん!お久しぶりです!」
「お前はミリィちゃんか?大きくなったのう。そちらは?」
「こっちの細い方がマギシ。で、こっちの筋肉がアックスです。」
「……おい、言い方。」
「で、そちらの女の子は?前にここに来た時はいなかったけど。」
「ああ、そうじゃった。ターナー、挨拶しなさい。」
「……。」
その女の子はカーターの後ろに隠れていた。
ピンク色の炎の様な髪の色をしており、まぶたを重そうにしている。
「すまんのう。この子は口下手なんじゃ。許してやってくれ。この子はターナー。わしの孫じゃ。今は修行に来ておる。」
「よろしくね。ターナーちゃん。」
「……。」
「ところで、わしに何か用かの?」
「それなんですが……。」
ミリィは魔法石のこと、魔法石の加工技術についてカーターに話した。
「ほう、魔法石の加工とな?ああ、できるぞ。」
「ほんとうですか?」
「ああ。なんなら、そこの少年のペンダントを作ったのはわしじゃからな。」
「なんだって!?」
マギシは驚きと共に、体がふつふつと熱くなっているのを感じた。
この老人は魔法石が自由に加工できる秘密を知っている。
しかも、この人がこのペンダントを作ってくれた人だなんて。
マギシはカーターに頭を下げた。
「僕に、その方法を教えてください。」
すると、カーターは少し考えた。
「タダで教えるわけにはいかんのう。」
マギシの頬から、じんわりと汗がにじみ出てきた。
「今わしのところに壊れた武器やら機械やらを直してほしいとの依頼がたくさん来ておる。お前さんにも少しばかり手伝ってもらうぞ。ちょっとこっちにこい。」
マギシ一行は、カーターの後に続いて庭の方に向かっていった。
すると、壊れた武器や機械が山のように積まれていた。
「もし手伝ってくれたら、その間は家にある本を自由に読んでいいぞ。もちろん、魔法石だけに限らん、世界中のあらゆる材料や加工技術が詰まっておる。」
「よし、乗った。」
「そうだ。みんなが鍛冶の手伝いしてる間に私が本を読んで、みんなに教えるっていうのはどう?」
「それはいいアイデアだ。時間も有効利用できる。」
「すると私は……。」
「アックスは食料の調達でもしてくれば?私もマギシも狩りは苦手なんだから。」
「承知した。」
こうしてマギシ一行は鍛冶屋を手伝うことになった。
「さあ、お前さんたち!早速武器を運ぶぞ!」
カーターが山積みの武器を運ぼうとしたその瞬間――
「うっ!!」
武器はガラガラと崩れ落ち、カーターは地面に倒れ込んでしまった。
マギシは心配そうに声をかける。
「大丈夫ですか!カーターさん。」
「ああ。わしは大丈夫じゃが、どうやら腰をやっちまったようじゃ……。」
「……え。」
マギシは腰を押さえているカーターを心配そうに見つめ、すぐさま視線を武器の山へ戻した。
「……どうすんの?この量。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます