東の鉱山へ向かう為、深緑の森へ
次に俺は市場に向かった。得た3000Gの資金で道具を購入する必要があったからだ。
続いてゴールデンスライムを倒してもいいが、運よく同時に複数倒せたから良かったものの、この稼ぎ方は確実性がなかった。運が悪かったらそもそも遭遇ができていなかったであろう。
もっと確実に資金を稼ぐ方法があった。金は金があると飛躍的に稼ぐ事ができるのだ。何事にも元手というものが必要だった。
俺はその道具を市場で揃えた。購入したのはマジックボム×5。一個200Gした。これは魔法師の爆裂魔法(ボム)を封印した、魔道具(アーティファクト)だ。魔法を使えない、戦士系の職業でも爆裂魔法(ボム)を使う事ができる。
投げると一定時間して、爆発する代物だ。
そして、次にツルハシを購入した。これも500Gした。さらにはトロッコも購入した。これも500G。
総計2000Gの消費だ。
【所持金】
3080G→1080G
【所持アイテム】
ポーション〈回復力小〉×5
マジックボム×5
ツルハシ×1
トロッコ×1
様々な物資を購入した結果、以上の状態に変化した。よし、これで準備は万全だ。
俺は東にある鉱山に向かうのであった。目的はそこにあるレアメタルだった。
◇
東の鉱山。古代書の知識によれば、そこに換金性の高い、レアメタルが眠っているはずだ。
――だが、そこに至るには深緑の森を抜けなければならない。
俺は深緑の森に入った。不気味な森だった。烏の鳴き声がする。そして、獣の匂いもした。
危険ではあったが、恐れていては何もできない。この困難を乗り越えた末に、俺の計画は大きく前進する――はずだ。
だが、そう事は上手くはいかないものだった。
「「「グウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」」」
無数の唸り声が聞こえてきた。薄暗い闇の中から、眼光が見えた。
ウォーウルフだ。
数匹の無数の狼が姿を現す。ウォーウルフのLVはせいぜい5程度だ。そんなに強力なモンスターというわけではない。
――だが、今の俺にとっては強敵に違いない。一瞬、逃げる事も頭の中に選択肢として浮かんできた。
しかし、ここで逃げていては活路がないと思った。俺は覚悟を決めた。
〈銅の剣〉を構える。
俺はウォーウルフ×3と対峙した。
「はあああああああああああああああああああああ!」
相手の方が数が多い。俺は先制攻撃を仕掛けるより他になかったのだ。
ザシュッ! 俺の剣がウォーウルフに突き刺さる。
「キャウン!」
ウォーウルフのうち、一匹が短い悲鳴をあげて果てた。
「やった!」
俺は思わず声をあげる。だが、喜んでいる暇などなかった。敵はまだいるのだ。
ウォーウルフの一匹が襲い掛かってくる。
俺は10のダメージを食らった。
HPが10/20になった。半減だ。
「く、くそっ!」
俺はゴブリン退治をした時に、貰ったポーション〈小回復〉がある事を思い出した。俺はアイテムポーチからポーション〈小回復〉を取り出す。ポーションは色によって回復量が違う。赤>緑>青の順番だ。当然、俺が取り出したポーションは青色だ。
下級で一番安いポーションだった。だが、俺のHPの総量自体が少ないので、これでも飲めば十分に回復できる。
だが、当然のように敵は待っていてはくれない。
ウォーウルフが俺に襲い掛かってくる。俺は鋭い牙を剣で何とか防いだ。
やはり、ソロクエストでは限界があるか。パーティーを組む必要性を俺は感じていた。とはいえ、大ハズレ職業として蔑まれている【竜騎士】の俺とパーティーを組みたい奴なんて、この世の中にそうそういないとは思うが。
嘆いてもいられなかった。
俺はウォーウルフと格闘する。完全に追い詰められていた。
「く、くそっ……」
俺は血だらけだった。HPは1/20になっている。もう、一撃も食らえなかった。どんな攻撃でも食らえばその時点で死ぬ。ポーションをがぶ飲みしたかったが、ウォーウルフはそんな隙を与えてくれるはずもない。
俺は死ぬのか……。脳裏には死の恐怖が浮かび上がってきた。幼い頃から憧れてきた、竜騎士になれたのに。
竜を従え、大空を飛び立つ事もないまま、俺は今、ここで朽ちようとしている。なんと情けない事だろうか。
無念だ。あまりにも無念。——だが、無情にもウォーウルフは俺の命を奪うべく、攻撃を仕掛けてくる。
万事休すだ。万策尽きた俺は目を閉じた。
――しかし、やってくるはずの痛みはなかった。
キャウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!
変わりに、ウォーウルフの断末魔のような悲鳴が響き渡った。
目を見開いた時、一人の人物の背中が見えた。剣を構えた一人の美しく、可憐な少女。俺はその少女に見覚えがあった。
カレン。
そう、俺の義妹(いもうと)だったのだ。
俺は想像もしていなかった助太刀に驚き、言葉を失っていた。
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