神々の選んだ錬金術師

すいな

エレメント王国

「ふむ、お前は普通の名で収まる器ではないな。ではお前には、アイテルという名を授ける」

そのなんだかわからない人らしきものは俺にそう言い、一見何も入っていないような瓶を開けてひっくり返し、俺の上に持ってきた。

涼し気な空気が頭の上からそよそよと降りてきて、俺は胸いっぱいにその空気を吸った。


そこからの景色は、ぼんやりとしていてよく見えなかった。

ただ、最後にその人影が喋ったことだけは、脳に直接響くかのように鮮明に聞こえた。

「お前に授けた名前とは、わしの兄弟の名前、つまり神に匹敵する。職業は、錬金術師じゃ」




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ふかふかのベッドに寝ていた俺を、誰かがゆすっている。誰だろう…

「…-ケ様!ニーケ様!起きてください!」

俺は薄く目を開けた。メイドのリンが俺を起こそうとしていたらしい。

「どうしたの、リン?」

「あなたのお母さまがニーケ様をお呼びなんです」

リンは眉を下げて困り顔だ。うーん、俺が呼ばれているのか。誰だっけ、えーっと、母さんk…

俺は真っ青になった。母さんに呼ばれているだと? 

母さんは時間にめちゃくちゃ厳しいんだ。遅れたら…精神的に殺されるな…

「それはやばい!急がないと!」

そういって俺は部屋を飛び出した。


俺はニーケ・ラドニクス。15歳だ。

俺の住んでいる国、エレメント王国での成人年齢は16歳。あと1年したら俺も大人だ。

廊下を全力疾走しながらの自己紹介でごめんな!


この国での成人の定義は年齢だけではない。王国での職業が決まったら大人になる。

職業を決める、と言っても自分で職種は決められない。いつの間にか決まっているのだ。

親や使用人、乳母たちは「神様が決める」というが本当のところはわからない。

ただし、時期が来ると自分の中に職種を決める、もう一つの名前がストンと落ちてくる…らしい。まだ俺は落ちてきていないからわからないが…。


もう一つの名前がもらえると、体に変化が起こる。

まず、戦闘職種。職種がこれになるときのもう一つの名前は「フェルム」だ。

この名前をもらった人たちは、体が普通の人より強靭になる。また、運動能力があがる。まあ、戦闘に必要な力が一通り向上するような感じだ。


2つ目に、魔法を扱う職種。この人たちの二つ名は、「アールム」だ。

この名前をもらった人たちは、「魔力」とやらが手に入るらしい。俺にはよくわからんが、それをもらえないと魔法が使えないそうだ。


3つ目に、商人など商いをする職種。この人たちの二つ名は「カーム」だ。

この名前をもらった人たちは、計算能力や管理能力が向上する。また、コミュニケーション能力も上がるそうだ。俺にはこれらの能力がうらやましいよ…


まあほかにもいろいろとあるんだが、今のところ名前をもらえていない人はいないらしい。

ちなみに、この名前は個人の力量はもちろん反映されるのだが、加えて個人の意向も結果を左右するらしい。力量よりも意向の方が優先されやすいようだ。いい話だなあ。


俺がなりたい職業は、もちろん戦闘職種だ!この国のモンスターをすべてなぎ倒して、いつか魔王に挑戦して勝てるくらい強くなりたいんだ!


そんなこんなで母さんの部屋につくのに2分かかった。やばい殺される…


「失礼します…母上」

ギギイッと重い音を立てて扉が開いた。

「ニーケ、入りなさい」

母さんの声がした。

俺は恐る恐る部屋に入った。






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