06

「神官長様。聖女様をお連れいたしました。」


なぜか門番の肩が震え、こう告げた神官Aも声が震えている。


「入れ」


扉が開くと、グラス越しにラモンと目が合う。


「し、閉めろ」


またなぜか震えた声のラモンの一声で重々しい扉が閉まった。



「ブっハハハハハハ!!!!!」



私を見るなり腹を抱えて笑い出すこの美少年、許すまじ!




いくらか笑い転げていたラモンが、まだ笑いを堪えつつ、質問する。



「ソフィー、なんでまたサングラスなんか聖女がかけているのさ」



そうか。やっぱり変だったかな。

真っ白な神官衣装に、少し茶色みがかったサングラスは...映えすぎたかな。

仕方なかったのだ。マリーと会話中に、急に使者が現れた。髪の毛は編み込みでハーフアップにしてくれていたし、あとは目元をどう隠そうかという段階だったのだが、あの使者、めっちゃドアを叩いて急かしてくる。瞳の色は公にするべきではないと判断したマリーは、とっさに引き出しを漁って出てきたサングラスを握りしめると、「ソフィー様許して!」といいながら装着され、連れ出され、今に至るのだ。



そんなことより、そうだ!ラモンには色々質問しなければならないことがある!!



「ラモン!私は聖女ってどういうことよ?そんなの嘘でしょ?」



「嘘だよ。」



ヘッ?私と彼の間に沈黙が流れる。私どう反応していいんだろう。

嘘であることは100パーセントのはずなのに、ここまで連れてこられて、マリーから月の女神様の話までされて、もしかしたら万に1でも、いや、億に1でも聖女って可能性は...と心を踊らせてたのに、一発玉砕したよ!!



「そんなの嘘に決まっているだろう。本人が一番わかっているだろうに。もしかしてソフィー周りに流されやすいタイプ?みんなが聖女様って言えば聖女になった気でいるのかな?」



ぐむむむむ。

否定できない、悔しい。それにあの得意げな顔!!!



「まあ、期待させちゃった僕も悪かったし、そんな顔しないでよ。可愛いから少しからかってみただけだって。」



可愛いと嘘でも言われて少し顔が赤くなる自分が恥ずかしい!犬もおだてりゃ木に登るって私のことだったのね...!



「わかったよ、急で色々心配しているんでしょ。まず、聖女でないけど聖女として振る舞ってもらうつもりでいるから。理由は後々話すから。そして、孤児院のことだけど、ソフィーがここで働くことは院長さんと話をつけてあるから。それに、あそこはマリーナ教会でもあるんだから好きな時に訪問できるし、お別れの挨拶とかいらないから。」



「え、えっと。私はこれからエセ聖女としてこの教会で働くと。そういうことでよろしいでしょうか?」


「そうだね。物分かりが早くて嬉しいよ。」



全然、物わかっておりません!!特にエセ聖女として働くところが意味不明です!



神官長と呼ばれるラモンには、なぜんかスタンドガラスから御光が差し込み、本当に天からの思し召しを告げる者のようなオーラがある。ふと優しく微笑みかけられ、歩み寄ってくる。


彼が近づくと同時に私の鼓動が大きくなる。


目の前に立ったラモンは、ゆっくりと私のサングラスをとった。



「僕に顔を見せて。僕だけの女神様。」



私と同じ黄金色の瞳を煌めかせ、そんなことを囁かれた時には、私の心臓は止まっていた。

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