04
「助けていただき感謝します。」
後ろを振り向くと鉄壁スマイルを浮かべたラモンがいた。
片手は彼に預けたまま、ゆっくりとラモンの方を見る。
「ちょうど討伐の帰りに、西の森で大型魔獣の気配を感じましてね、国境線上の森ではありましたが心配で来てしまいまいた。しかしご無事で何よりです、若き神官長殿。」
神官長?今神官長って言った?ラモンに向かって??
「助かりました。ヨド王国のハルミド殿下。」
隣国ヨド王国の殿下?彼は王子様みたいではなく、正真正銘の王子?!
なんだか、すごく位の高い方たちに囲まれてませんか?私ここから消え去りたい....
「殿下、その子かい?まるで物語のお姫様のように殿下が助けてあげたという娘は?」
途端に荒らしい男の声がした。殿下の部下なのだろうか?ジトジトした視線を感じる。それになんだなんだと周囲に人が集まってきた。
「例のお姫様がどんなのかって見にきたら、ボサボサあたまで顔もよくわかんねぇ娘じゃないか。」
「お姫様っていうにはなんか違うよな。ワハハハっ!」
皆が一斉に笑い出している。
そうだよね、私自分の立場もわきまえず目の前の殿下を王子様みたいな人なんて勘違いしていたんだから。笑われても仕方ないわ。私は恐る恐る前髪の隙間から殿下を見た。
笑っていない。
それどころか周囲を見る瞳の色が冷たい色をしている。
すると後ろから腕が強くひかれ、暖かな温もりが背中を包んだ。
「殿下には感謝しています。こうして私と、聖女様をお守りしていただいたのですから。マリーナ教会を代表していずれ、殿下には何かお礼をさせていただきたく思っております。」
先ほどまで笑っていた男達が静まりかえり、私の方をまるで幽霊にでも会ったかのような顔をして凝視している。
殿下は「まさか」と小さく呟き考え込んでいる。
聖女様を守った?聖女様ってどこかにいらっしゃたのかしら?聞いたところによると伝説でそれこそお伽話だと思っていたけど。あれ?みんなの視線をまた強く感じる。近くを見渡すが女の子は私しかいない...?もしかして聖女って私のこと?????何?あれ?へっ??
激しく動揺する私をそっと強く抱きしめる腕がある。冷静になった私はふと目の前の状況を確認する。座り込んだ私を後ろから抱き寄せているのって...ラモン?
ゆっくりと顔をあげると、不敵な笑みを浮かべるラモンと視線があった。金色の髪が私の前髪にかかる。腹黒スマイルなのに...でもとての神々しい....
「聖女様に、失礼いたしました。周りのものにも後で言って聞かせます。」
殿下は姿勢を正すと綺麗な姿勢で謝罪をしてくれた。
笑われて当然なのは私の方で、そんな畏っていただかなくても全然大丈夫なのに...
私がそう言おうとして体を乗り出そうとすると抱きしめるラモンの腕が再度強くなる。
「殿下よろしくお願いしますね。本来であれば聖女様を見ることさえ許されない人達なのですから」
ラモンスマイルオソロシヤ...
*****
我が国はマリーナ教会の教皇が治める国でマリーナ国という。その隣国に、ヨド帝国、その国境にあるのが私がいた孤児院のあるシュラの森である。
殿下は、「お許しいただけるのであればマリーナ国の主神殿まで神官長と聖女様をお送りいたしましょう」と言ってくださり私たちはお言葉に甘えて彼らの馬車に乗っていた。
馬車の中はなんとも気まずい雰囲気なのに、私は前髪の隙間から何度かハルミド殿下を見てしまった。
もう一生会えることはない、恩人であり、初めて心がときめいた人。車窓を見ながら何やらものふける彼の横顔を私は心の記憶として密かに焼き付けておいたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます