ジャメヴ

第1話

彼が気付いた時、暗闇の中にいた。何も見えず、身動きもほとんど取れない。その割には意外と心地好ここちよいと感じていた。どこかに移動しているという事は分かるが、それ以上の事は分からない。

その後、彼は眠気に襲われ、いつの間にか眠っていた。


どれくらいの時間が経っただろう……。再び目を覚ますと、何も見えず、真っ暗なのは相変わらずだが、思い通りとはいかないまでも、ある程度自由に動けるようになった。やはり、どこかへ移動しているようだ。どこに向かっているのだろう?

そして、彼は再び眠りについた。


ある日、眠りから覚めると、声が聞こえる。何を言っているのかは分からない。彼は必死に情報を得ようとするが、内容を理解する事は出来なかった。会話が終わると、僅かながら音楽が聞こえてきた。クラシックだろうか……。

その穏やかな音楽のせいもあるのだろう。暫くすると、彼は眠っていた。


長い間、閉じ込められているにもかかわらず、彼はこの環境を理想的だと感じるようになってきた。もう、このままずっとこの状態でも構わないとさえ思うようになっていた。

そんな中、周りが騒々しくなったのを彼は感じた。何故か自分自身にもストレスがかかる。すると、身体全体を圧迫されているようで身動きが取れない。大きな風船の中で気持ち良く遊んでいたのに、風船の空気が抜けて締め付けられているかのような状況……。早くここから出ないと死んでしまうかも知れない。彼は脱出しようと試みるのだが、急激な頭痛が襲ってきた。頭を万力で締められるような感覚。頭の形が変わる程の力……。ギシギシと頭蓋骨がきしむ。


そして……。

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