第12話/神様

匣を開く。

其処から出て来たのは黒い手袋だった。

いや、手に嵌めるものではあるが、防護と言った機能は存在しない、布の面積が六割程度しか無い術具だ。


「これが移動用のアイテム?」


俺は疑問を浮かべる。

体に纏わりつく夢現が頬ずりをしながら頷いた。


「ねいたんが作った術具は夢を元にしてるの、『脱出したい』って言う願望によって作られたのが、この術具」


「使い方とか分かるのか?」


俺は術具を手に嵌めて見て五指を開いて閉じたり繰り返す。

とりあえず、能力を発動すると認識してみる。

すると、俺の体の中から大量に気力を奪われるかの感覚が来る。

ガクン、と俺の体が崩れそうになる。


すると、俺の体を支えてくれる夢現。

彼女の足元から何本もの腕が生えて、俺の体を掴んでいた。


「うわ……」


急に出て来たので、俺は驚いて声をあげてしまった。

得意げな表情を浮かべる夢現は、何回か聞いたことのある説明を行って来る。


「私は夢と現の境を無くす、私は夢に入る事が出来て、夢に出て来たものを、現へ寄せる事が出来る……とは別に関係ないのこれ、私の権能である触手だから」


「権能って……」


「私、もとい、ねいたんは、一般的に言う神の立ち位置なの。神にはそれぞれ大系権能と神力権能の二つが存在して、大系権能はその神にしか扱えない能力で、神力権能は神が本来持つ能力の事。触手を生やす神様は沢山いて、ねいたんも触手を生やせるのよ」


……別に、どうでも良い情報だった。


「……神様がなんでこんな所に居るんだ?」


俺は、彼女が何故こんな所に居るのか気になったので、聞いてみる事にした。

普通、神様と言う存在なら、こんな狭い場所じゃなくて、大空とか、もっと壮大な場所で生活、もとい神様事業などなんなりとしていると思っていたのだが。


「ねいたんは俗に言う祟り神………術師が手に負えないからって、この迷宮に不法投棄したの、悪いでしょう?」


そう同意を求めて来る夢現に俺は適当に頷いてみせた。


「まあ、むかつく話ではあるけど……今は、そう怒っている場合じゃない……早く、此処から出よう」


そう言って俺は手袋に持って行かれた力を発揮する。

ぶおん、と、黒い渦の門が開いた。

それは、青と紫と黒の三色が渦巻く様な異様な空間であり、これがどうやら、別の場所へと繋がっている様子だった。


「……大丈夫だよな?」


この空間に入って、体をバラバラにされたり、この世界とは違う別の異次元へと飛ばされたりしないだろうか?


そんな事を考えながら、俺は恐る恐る開いた異次元の門の中へ入って行った。

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