57話相談

さて……覚悟を決めたは良いが。


ことがことなので、慎重になる。


こういう時は、年配者の方に聞くべきだろう。





「と、いうわけなんです……」


亮司さんに、春香について相談をすることにした。


「ふむ、なるほど。春香さん、良かったですね」


「はい?」


「いえいえ、こっちの話です。それで、お付き合いをするのですか?」


「いや……未成年なので、どうしたものかと」


「ふむ……結婚すれば良いのでは?」


「へっ? ……いやいや! 学生だし、まだまだ早いですよ!」


「宗馬君……そうですね、確かに早いかもしれません」


「ええ、やっぱり」


「ですが……良いではありませんか?」


「えっ?」


「私は早くに妻を亡くしました。二人で還暦を迎えるのを楽しみにしていました……お金も溜まって、これから旅行をしたりペットを飼ったりしようと……」


「亮司さん……」


「実は、私は妻と結婚するまで時間がかかりまして……当時お金のなかった私は、きちんと養えるようになってからと決めていました」


そう……それは、俺も考えていたことだ。

仮に、もし仮に……春香とそうなったなら、責任が伴う。

軌道に乗ったとはいえ、この世界は厳しい。

このまま、売り上げが伸びるとは限らない。


「それは……普通だと思います」


「ええ、私もそう思います……が、少しだけ後悔しています。もう少し早く結婚して、一緒に過ごしていたらなと。妻も、結婚した時にぼやいていました。私だってお手伝いしたかったと……私のつまらないプライドのせいで、貴重な時間を失いました」


「それは、でも……」


「わかっておりますよ、結果論なのは。ただ、人生とはわからないものです。ならば、後悔のないようにした方がいいかと思いますよ。何より、相手ありきのことですから……きっちりとお話をしてあげるべきかと」


……そうか。

俺は春香が子供だから、俺が全部決めなくてはいけないと思っていた。

俺が養って面倒を見てやらないと……なんて傲慢だ。


「そうですね……きちんと話をしようと思います」


「ええ、それがいいかと」






亮司さんに礼を言って、そのままとある店に向かい……。


あるものを購入をして……自室にて、考えにふける。


「そういや、俺の両親もそんなに長くはいられなかったんだよな」


結婚十年目で事故にあってしまった。


「もっと、長く一緒に居たかっただろうなぁ」


もちろん、悲しい別れを前提に考えることは良くない。


でも……何が起きるかわからないのが人生だ。


春香が他の男に惚れるかもしれないし……ムカつくな。


俺の店が潰れるかもしれないし、何か怪我をするかもしれない。


「だが……考えてたらきりがない」


だったら……今、したいことをするのが一番良いのかもしれない。










そして、運命の八月の十日が訪れる。

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