アラサー独身の俺が義妹を預かることになった~俺と義妹が本当の家族になるまで~

おとら@五シリーズ商業化

一章 義妹を預かる

プロローグ

 ……やれやれ、大変だな、こりゃ。


「こらー! 詩織! 裸で出ないのっ!」


「やっー!」


「おい!? お前もだよ!」


 俺の目の前には、バスタオル一枚姿の義妹がいる。

 子供の頃とは違い、すっかり女性らしい体つきになっている。

 あんなにつるぺただったのに、時が経つのは早いもんだ。

俺がおっさんになるわけだな。


「へっ? ……きゃあ〜!? お兄ちゃんのばかぁぁ——!」


「グハッ!?」


 座布団がぶん投げられて、顔面に直撃する。


「きゃははっ! おじたんぶっ飛んだ!」


「なにすんだよ!?」


「こっち見ないでよぉ〜!」


「お前が風呂場に戻れよっ! ここはリビングだっ!」


「はっ! そ、そうだった! 詩織! 戻るわよ!」


「うんっ! あぁー楽しかった!」


「こら、あんまり騒いじゃダメよ。いくら一軒家だからって」


「はーい」


 ドタドタと足音を立てて、風呂場に戻っていく。


「ったく、床が濡れてるっーの」


 タオルで濡れた床を拭いていく。


「まあ、でも……詩織に元気が出て良かったな」


 両親が海外転勤でいなくて、こっちに来た時は塞ぎ込んでいたが……。

 まだ五歳だ、無理もないことだ。

 だが、あいつのおかげもあって、詩織も笑顔を見せるようになってきた。


「春香も、なんか知らないが避けないし」


 ついこの間まで、少し避けられていたというのに。

 中学二年になったあたりから避けられていたが……。

 急に、懐いてきたというか……年頃の女の子はよくわからん。


「二人とも、俺の店での評判も良いし」


 いつのまにか、看板娘になってやがった。

 いや、別にいいんだけど。

 ただ、男共が寄ってくるのは許せん。


「俺は兄貴に、あの子達を託されたわけだし……まだ春香に恋人なんて早すぎる!」


 だいたい、そんなことになったら……。


「俺が兄貴に殺される……監督不行き届きかんとくふゆきとどきとして」


 娘を溺愛してるからなぁ、兄貴は。

 まあ、一緒に暮らすと、それも無理はないかと思う。


「お兄ちゃん?」


「うおっ!?」


「おじたん、どしたのー?」


 いつの間にか、二人が俺の顔を覗き込んでいた。


「いや、何でもない。ほら、ガキ共は寝ろ。明日も早いんだろ」


「お兄ちゃんも早く寝てよね? 身体休めないと……」


「ああ、わかってるよ」


「むにゃ……」


「あらら、眠いなっちゃったね。ほら、いこ」


「うん……おじたん、おやすみなさい」


「ああ、おやすみ。春香もな」


「うん、おやすみなさい」


 二人が寝室に入るのを見届ける。


「ふぅ……何年振りかに人と暮らすが、やっぱり大変だな」


 だが、しっかりしないと。


 短い間だが、今は俺が母であり父であり、お兄ちゃんなんだから。

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