第13話 鶴の一声
「それで、俺たちは何から手を付けたらいいんですか?」
小吉の質問、もとい詰問が続く。
「そうだねえ、闇雲に探してもしょうがないからある程度の目星をつけて探した方がいいだろうねえ」賀茂が顔色を変えずに答える。
「でも、目星をつけるにしても手がかりが少ないですよ」瀬奈が答える。
「そうね、せめて写真でもあれば見つけやさすが段違いなのに」美鈴さんが腕を組みながら言う。
こういう場合、何から調査していけばいのかさっぱりわからないが、賀茂という男の持っている情報がこれだけとは思えなかった。本当はもっと核心的な情報を持っているのではないだろうか。しかしそれを口にせずに知らないフリをしている。もしかしたら僕たちを試しているのかもしれない。だとしたら、賀茂の先ほどの少しの情報に何かしらのヒントが隠れているのではないだろうか。
大学と名前はわかっている。逆にそれ以上の情報はない。それはもしかしたら僕たち同じ学生にしかわからない情報、というより知りうることができない情報なのではないだろうか。しかし、僕の立案にこの人たちが乗ってくれるだろうか。もしかしたら的外れなことを言ってしまうかもしれない。その結果、無能と判断されてしまったら僕はここにいることができなくなってしまうのではないだろうか。
僕はふと隣にいる小吉を見た。小吉は毅然とした表情で僕を見返してくれた。何も言わなかったが小吉のその表情を見たときに迷いが消えた。
「情報課に何とかして聞き出せないですかね」僕は恐る恐る口を開く。
「情報課?」美鈴さんが返してくれた。
「えぇ、僕たちの大学には学内のあらゆる情報を取り扱っている情報課というものがあります。落とし物や各種手続きはそこでできます。また、検索用パソコンなども完備されているので何かしらの情報がわかるかもしれません。」
「ほう、なるほど」賀茂が少しニヤリとしながら言った。
「確かに、そこにいけば何かわかるかもしれないわね」瀬奈が続いて言う。
「よし、まずはその線で進めてみよう」小吉も同意してくれた。
よかった。とりあえず的外れな発言をしたわけではないようだ。しかしやはりこの賀茂という男、不気味だ。何を考えているのかわからない。僕の若干20年の歴史でこんなタイプの人間に出会ったのは初めてだ。
「でもいくら情報課とは言え、いち学生の個人情報は流石に教えてくれないんじゃないかしら」瀬奈が思い出したように付け加える。
「それなら、俺にいい考えがあるよ」小吉がいつもの良からぬことを考えているような顔でそう言った。こういう時の小吉は少しワクワクする。僕は、何か今までとは違う、刺激的なことが起きる予感がしていた。
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