第7話

 久しぶりに学校にやってきた亜紀ちゃんはボランティアをしていた時と同じ落ち着いた髪の色だった。以前のように明るい色に戻しているんじゃないかと思っていたんだけど、両親からも髪を染めるのを禁止されたらしく以前とは違って落ち着いた色だった。

 亜紀ちゃんは山口以外のみんなに謝って回っていたんだけど、その姿はどことなく悲しげで痛々しく見えてしまった。謝って回っている姿を見て亜梨沙ちゃんも梓ちゃんも怒っていたんだけど、チラッと見た山口はその様子を嬉しそうにニヤニヤしながら見ていたのだった。

 私も亜紀ちゃんに謝られたんだけど、亜紀ちゃんが謝るようなことはしていないんだし、私は一刻も早く前の元気な亜紀ちゃんに戻ってほしいって伝えた。それを聞いた亜梨沙ちゃんも梓ちゃんも私と同じ気持ちだったみたいで、梓ちゃんと亜紀ちゃんは涙を流しながら抱き合っていた。私もそれに加わろうかと思って見ていたんだけど、朝方近くまで亜梨沙ちゃんと恋愛アプリでやり取りをしていたので急に眠気に襲われてしまっていた。


 その日の授業は何事もなく終わり、先生たちも亜紀ちゃんに対して特に何を言うことも無く無事に時間は過ぎていった。

 その頃には私の眠気もピークに達していて、今すぐにでも帰ってベッドに横になりたいと思っていた。亜梨沙ちゃんも眠そうにはしているのだけれど、私と違って放課後でも元気いっぱいな様子だったので凄いなと思ってしまった。


「ねえ、亜紀ちゃんが元気ないみたいだけど、これからどこかに誘ってみる?」

「いいと思うけど、私は少し疲れているみたいで眠いかも。亜梨沙ちゃんは眠くないの?」

「少しだけ眠いかもしれないけど、平気だよ」

「そっか、私はいつもより寝るのが遅かったから今はもう限界が近いかも。ごめんね」

「いや、こっちこそごめんね。泉ちゃんって割と早く寝るタイプだと知ってたんだけど、ついつい夢中になって返信しちゃってたよ。寝る時間になったら教えてくれていいからね」

「うん、ごめんね。今日はちょっと眠すぎるから帰って寝ることにするよ」


 本当に限界が近かった私は帰って寝ることにしたんだけど、その前に少しだけ亜紀ちゃんとお話をすることが出来た。その時も亜紀ちゃんは元気が無さそうだったけど無理をしているのがわかった。山口の事は本当に許せないと思ったんだけど、どうしても眠気には勝てそうになかったので私は一人で家に帰ることにした。

 梓ちゃんが山口と何か揉めているのはわかったのだけれど、私はそんなに気にすることも無く家に帰ることにした。梓ちゃんの近くには吉原君と瀬口君がいたんだけど、奥谷君の姿は近くに無かったな。もしかしたら、奥谷君は演劇部の活動があるのかもしれないね。年末に何かの劇をやるって言ってたけど、それを見に行くことが出来たらいいなって思うよ。


 私は眠い中を頑張って家に帰ったんだけど、着替えをしてそのまま横になっていたら、いつの間にか夜の遅い時間になっていた。

 晩御飯は用意されていたのでソレを食べてからお風呂に入ったのだけれど、部屋に戻ってスマホを見てみると亜梨沙ちゃんからメッセージがきていた。

 LINEと恋愛アプリにメッセージがきていたので両方に返したんだけれど、LINEの方は返事が返ってこずに恋愛アプリの方にだけメッセージが返ってきていた。


 さっきまで寝ていたのとお風呂に入ったこともあって目は覚めていたんだけど、このまままた朝までやり取りをしちゃうと学校でまた眠くなっちゃうなと考えてはいた。考えてはいたんだけど、メッセージを送っているうちに時間を忘れてしまって気が付いたら外は明るくなっていた。今日も学校で眠くなっちゃうのかなと思ってしまったけれど、今日は土曜日だったという事を思い出して、私はそのまましばらくやり取りを続けていた。


 いつの間にか眠っていた私はスマホを握りしめていたのだけれど、ロックを解除してみたところ、亜梨沙ちゃんからLINEの返信がきていた。


 私は亜梨沙ちゃんと数回のやり取りをしてから私は出されていた課題をやっていたのだけれど、ふと見たスマホには亜梨沙ちゃんからメッセージが届いていた。私は恋愛アプリを開いて返事を返してから課題に戻ったのだけれど、気が付いた時には課題をやりながらスマホをいじってしまっていた。

 それは良くないと思った私はスマホの電源を落として課題に集中することにしたのだけれど、なかなか集中することは難しく何度も何度もスマホに手を伸ばしてしまっていた。

 ただ、私は電源を入れることも無く課題をやり終えたのであとは気兼ねなく時間を自由に使うことが出来るのだ。


 私の週末は課題をやっていたことを除くと、ずっと亜梨沙ちゃんとメッセージのやり取りをしていたんじゃないかと思うほどだった。

 恋愛アプリ内に貯まっているポイントを確認すると、普通にファミレスに行けそうなくらい貯まっていたのは驚いたが、時間を有効に活用できたと思うと納得するのだった。

 私は貯まっていたポイントをチャージしてから学校に備えて寝たのだけれど、さすがに学校が始まる前日の夜はそこまで遅い時間までやり取りをすることは無かったのだった。

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