2.聖女の力

「ミシェル、あなたがどんなに卑劣な方法を用いても、私を陥れることは出来ないわ。偽りの聖女様、もう茶番はお終いよ」


「偽っていたのはフローラでしょう?皆、私が聖女だと知っているのよ!今の祈りの光だって見たでしょう?」


あれで証明出来たと本気で信じているのね。あんな光で誤魔化せるのは、魔法を使えない人々だけでしょうに。


「あれだけでは不十分です。罪人である私を聖なる炎で燃やしてみせてください。私のことを罪人だと言うのなら、聖なる炎で浄化してくださいまし」


そう言うとミシェルは少し困惑していた。まさか燃やせと言われるとは思っていなかったのだろう。


聖なる炎は聖女にしか使えない浄化の魔法だ。首席神官でも使えはしない。けれど似たような魔法で誤魔化す可能性があるので、首席神官に拘束の魔法を放つ。これでミシェルはもう何も出来ないわ。


「……わかりました。フローラがそこまで言うなら燃やして差し上げますわ!」


首席神官が拘束されているとも知らず、自信満々に言ってのけ、祈りを捧げるポーズをとる。


……何も起きませんけどね。


「ミシェル、どうしたんだ?早く聖なる炎であの罪人を燃やしてしまえ!」


ユーゴは、何も起きないことに苛立っているようね。仮にも元婚約者を燃やしたがるなんて、酷い男。


「どうして……どうして何も出ないの?!」


苛立つユーゴに取り乱すミシェル。周囲の人々は、異変に気がついたようだ。ざわめき始めている。


「どうやら出来ないようですね、偽りの聖女様。不思議ですね?」


「……っ!あなたに慈悲を与えます。国外で反省すれば許してあげます。だから燃やしたりしません」


あらー誤魔化すのがお上手ね。さすが十年もの間、人々を欺いてきただけのことはあるわ。


でももう面倒だから終わらせましょう。


「ではその判断を後悔させてあげましょう」


私が聖女の力を国全体に流し込むと、国中は闇に包まれた。この力は本来、腐敗した国を封印するための力だ。


まあこんな王子と偽聖女のいる国は、いずれ腐敗する。封印しても良いでしょう。




広間は騒然としており、暗闇の中ではユーゴもミシェルもどうする事も出来ないようだ。


「ミシェル、あなたが本当に聖女ならこの闇を晴らしてみせなさい。それからユーゴ、あなたのお父様である国王に伝えなさい。この闇を晴らしたければ、真の聖女に礼を尽くせと。そうしなければ一週間もしないうちに、皆眠りにつくことになるわ」


私はそれだけ言うと、宮殿を後にした。


家に帰ってお父様に説明しないと。とても怒られそうだけれど、仕方がない……。

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