CONTINUE

アキヅキ

10年前からNewgame

 学生時分ちょっとした冗談で

「なぁ人生でもしCONTINUEが使えるとしたらお前使いたい?」

 勿論冗談だ。

 だがソイツは正直に

「CONTINUEってのはその場か?」

 その場合はNOだな。

 と答えた。

 これで話は終わりだと思っていた。

「だが、もしCONTINUEがステージの最初に戻るようなものであった場合は別だ」

 あ?

「これが人生だった場合、10年くらい前からNewgameだったなら俺はそれを使いたい」

 勿論データは取ってあるし、それに沿った形で10年を生きるだろう。

 それが恋であれ、殺意であれな。

「んなら、残機が2機くらいあってのCONTINUEなら?」

 残機を組むならそれほど焦る必要はない。

 精々一週間程度戻るくらいで済むだろう。

「なるほどな。先生来たぜ?」

 まるで何もしてなかったみたいにその時は二人共前を向いた。


 ケントとはこうしてたまに哲学じみた話をする。

 結論は出なくてもそれが面白かった。


 結論は出ていないはずだった。

 俺の中ではただの雑談。


 それから10年以上の時が経ち、ケントとは会えなくなっていた。

 喧嘩はするわ、人の恋人に手つけるわと、何かの実験でもするようにケントは俺の嫌いなタイプになっていった。

 だから別れた。

 でもたぶん、それは俺から見た印象なんだろうな。

_ケントはどう思ってたんだろ。

 その答えが今、巷を賑わせていた。

 別れたケントがテレビに写っていた。

「それではご紹介しましょう!本日のゲストです!」

 言われるままにケントは現れる。

 なしてあんなヤツが脚光を浴びる。

「ケントさんはどうしてこの研究を?」

 チャラい感じのバラエティ司会者にいきなり核心をつかれてケントは爽やかに

「昔友達が言っていたのをきっかけに研究してみようと思ったんです」

 その友達には悪いことをしました。

 と画面に向かって頭を下げた。

「そうかぁでも形にできたんだね」

 と功績を称えた司会者。


 頭を上げないまま、

「でも失ったものも多い」

 こんなことで許されるとは思わないけど、


 俺はテレビを消した。

 謝って欲しいとか、そういうことじゃないんだよ。

 お前にはわからないのか。


 その後アイツがどんなことをしていたかは連絡はとれなくてもわかった。

 新聞、雑誌、テレビにネットニュース、、

 あらゆるメディアにアイツはいた。

 いわゆるCONTINUEをアイツは実際にできるようにしてしまった。

 それは海外の雑誌にも取り上げられちょっと前まで隣を歩いていたヤツとは信じ難いほどだった。


 アイツは海外のメディアでだけ詳しい話を語っていた。

「人の遺伝子には回復能力があるというのは皆さんお気づきかもしれません」

 それは傷を治したり、病気と戦ったりする力として存在すると考えて下さい。

 そこには勿論回復するイメージというものが登録されているんです。

 ですから、、

 要するにアレだ。

 元々ある力に基づいて作ったものだから何の問題もないというらしい。

 CONTINUEはその流れに沿った人類の使われていなかった能力だとアイツは言っていた。

 しかし問題なのはそれを使う側である。

 元々使われていなかった能力だから、誰もその能力の使い方を知らない。

 どこに力を入れればいいとか、準備運動はどうすればいいとか。

 その基礎はこれからだった。

 使いたい人は勝手に、、というワケにはいかない。

 危険を伴うのでアイツはそれについても言及を怠らなかった。

 海外を後ろ盾にアイツは教育機関を作ることを切り出した。

 そして、テレビの向こうの恐らく俺に向かって、

「頼む!あの時のことは悪かった!お前の力が必要なんだアユム!」

 自分から去っていってそれはないだろ?

 俺がそういうのを見越してか

「虫のいい話だってことはわかってる。

でも、お前なしじゃ完成しないんだ!」

 ふざけるな。俺はお前みたいに頭よくないんだ。

「そうじゃない!お前の発想力がいるんだよ」


 このあとしばらくお待ち下さいと表示され、明けた頃にはケントの姿はなかった。

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