第24話 バイオシグナル・キャンセラー
ホモ・テクスの技術はついに、神経系にまで及んだ。それは、ニューロン・ショッカーの話を聞いた君たちなら分かるはず。だがしかし、技術者たちはそこで満足しなかった。テクノロジーを改良すれば、より広い範囲に影響を与えられる。そんなことを思っていたらしい。
そうして多くの研究が進められ、新しいテクノロジーが生まれる事になった。それが、バイオシグナル・キャンセラーという技術。どういうものか?何が出来るのか?私は何1つ分からなかった。
だが今は違う。私は持病を抱えながらも、こうして教壇に立っている。君たちに、科学技術の重要性について教えるられているのも、バイオシグナル・キャンセラーのお陰と言っても良いだろう。そのくらい私は、今も尚、これに助けられている。そう、今もだ。つまり、本来の私がどういう状態にあるか。優秀な君たちであれば、何となくでも察する事は、簡単に出来てしまう。
さて、今の私でもなく、本来の私でもない、過去の私の話をしよう。覚えている人も君たちの中には多いかもしれない。ソリッド・クリアが流行した時期だ。
その時、私は何をしていたか。ずっと家に引きこもっていた。いや、正確に言えば、持病の症状が酷くて、家から出られなかった。私はいつも自分を責めていた。この持病さえなければ。あるいは、こんな状態になってなければと。そんな状態のまま過ごしていたから、自堕落な生活になるのも無理はなかった。
ただ、たった1つの手術で私は変われた。完全にとまではいかなくとも、それまでの無意味な日々を脱せたことを感じていたのだから。その後の私は、ほぼ毎日、ホモ・テクスを中心としたテクノロジーの変遷を理解することに、多くの時間を費やした。正直、辛かった。仲間もいない、講師もいない。教え子もいない。刺激になる存在がいない中、何度も挫折しかけた。
しかし私は、その度に心の中で、私自身を叱った。もし学習を止めれば、怠惰な頃の私に逆戻りしてしまう。私はそれがどうしても嫌だった。だから結局、最後までやり切った。私が教授に就く事になったのも、自己学習で身に着いた習慣があるからこそ。そうでなければ、この論文は生まれていない。
さて、私の過去話はこれで終わり。重要なのは何かを始め、続けること。もし一時的に止めたら?後々大変なことになるのは目に見えている。この後の私のように。
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