第4話
という夢を見たらしく、チョコは隣で寝るジャンボを夜中なのに揺さぶり起こした。
「なんだよ……」
その声だけでもチョコはホッとし、ボロボロ泣いた。
ジャンボはしばらく寝ぼけていたが、尋常じゃない様子のチョコに気が付き、慌ててついバニラも起こしてしまう。
「なに……朝……?」
「いや……チョコが……怖い夢見たって」
「はぁ……?」
呆れ顔のバニラが目をこすりながら起き上がる。
その姿を見て、チョコは余計涙が止まらなくなった。
バニラはあくびをしつつも、やはりチョコの様子がおかしいことに気が付き、慌て始める。
「なに?ジャンボがなんかしたの?」
「違うって。なんか怖い夢見たって……」
「そんな?そんな理由で?」
チョコはなにも話せず、ただ動いて話す2人を見ているだけで、息が詰まった。
良かった、本当に良かったと、震える声で繰り返した。
「なんだよ……俺たちが死んだ夢?」
やっと語り出したチョコの夢の内容を聞き、気まずそうにバニラはジャンボを見た。
ジャンボも同じ顔をしている。
「まぁ、でもほら、生きてるから。な?わりとピンピンしてるぞ」
ジャンボはなんとか泣き止ませようとしたが、チョコは余計にボロボロ泣いた。
「俺だって後追ったりしないよ、やだな。別にジャンボが死んだって生きていくし」
「おい、その言い方は俺が傷つく」
「あ、まぁ、墓参りくらいには行くよ?」
「なんでそんな割り切りが早いんだよ」
二人のいつも通りの会話に、やっとチョコは少しだけ笑った。
涙は止まらないが、彼らが生きてるだけで充分だ。
「本当に……ごめん……ジャンボが死ななくてよかった……」
「そうそう死なないから安心しろ。撃たれたって生きてんだぞ」
「確かに。ジャンボってわりと化け物じみてるよな」
「言い方が悪い。生命力が強いって言ってくれ」
どうしても涙が収まらないチョコを見て、二人はため息をついた。
そしてジャンボはチョコの頭を撫でて、ぎゅっと抱きしめた。
仕方ないなというように、バニラもチョコを抱きしめた。
するとようやくチョコは少しだけ落ち着いてきたようで、三人はそのままくっついて寝ることにした。
ジャンボが毎夜見ていたような悪夢をチョコもしばらくは背負うだろう。
でもチョコは人殺しにはならなかった。
雨の中走ったチョコがジャンボの命をつなぎとめたから。
いつか、その悪夢から開放されるようジャンボも祈った。
三人は静かに寝息を立てて、今度こそ穏やかに眠る。
ジャンボが退院してからまだ日も浅い、とある晩の事だった。
終わり
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