第11節

[※ 今節の語り手は【陶次郎】となっております。次節以降は再び語り手を【静姫(隆静)】に戻します。]




翌朝。


陶次郎「・・・・・・という事で、宇橋ちゃんの対応は任せた!」


怜六「はぁ!?この近くにいる知り合いに用事があるだぁ!?」


陶次郎「わりぃ。本当は今日の夕方に会う予定やったんやけど、急に呼び出されてさ。この埋め合わせは必ずするから!」


怜六「宇橋と同クラスの奴がいねぇのにどうやって指導しろっつーんだよ!ったく、気は進まねぇけど、投堂でも呼ぶか。」


隆静「えっ!?」ギョッ


ビビり過ぎでしょ宇橋ちゃんwww


怜六「恨むならトッチィへどうぞ。オレは責任は取らん。」


まぁ、それはそう。


隆静「・・・も、もうこうなったら望む所やわ!!!」


こうしてレイによる宇橋ちゃんの猛特訓は始まった。後から聞いた話だが夕方迄続いたそうだ。




そんな二人のもとをあとにして、折り畳みのチャリを飛ばしたおれが何処へ向かったかというと・・・・・・。


陶次郎「さてと、やっぱり門真から寝屋川って近いなー。」


先ずは駅前のコンビニに向かい、複合機の前に立った。


陶次郎「あとで印刷代を補填してくれるとはいえ、勿体無く感じるよなー。」


事前にWEBで予約していた番号を入力し、お金を入れていく。すると、印刷されたL判写真がバッスンバッスンと出力されている。それを見たおれは本音が漏れた。


陶次郎「頼まれ事とはいえ、クソ恥ずかしいな、これ。何回やっても慣れねぇ〜!!!」


本当はこんな非効率かつ公開処刑の様な恥辱行為などやりたくもない。ただ相手が相手だ。やらないという選択肢は考えられない。


陶次郎「さて、公衆の面前に晒されるコンビニという場所からさっさとトンズラしねぇと、おれが理不尽に恥をかくからな。」


コンビニをあとにし、自転車を飛ばしてある場所に向かった。そこは・・・・・・。




【若宮】




陶次郎「さて、この道を通るのも今年で最後になるのかならないのか。リィリは大学に進学したら一人暮らしする予定だっつーてたけど、それ以外で新たにここに来る理由が出来るのか。とにもかくにも、【この用事】は今日にでも最後にしてほしいところやがな。」


インターホン「ピンポーン♪」




1分経過。応答無し。


陶次郎「・・・・・・留守か?」


璃澄「はいはーい。」ドタドタ


陶次郎「流石に違うか。」


寝てただけの様だ、多分。


陶次郎「リィリ。今月も持ってきt」


璃澄「ストーーーップストップストップストップ!!!一旦、中に入ろうか。」


陶次郎「別に写真渡すだけだろ?ここで済ませれば良いのに。」


璃澄「トッチィくんは良くてもあたしが駄目なの・・・っ、駄目なの!!!」


あっ、ヤベェ。眼がガンギマってる。


陶次郎「分かった!分かったから!部屋に入れば良いんだろ入れば!」


そしてそのままリィリを部屋迄連れていった。いや、誰の家だよここ。




璃澄「んんん〜〜〜っ♡♡♡やっぱり新鮮なレイくんの写真は、味わい深くて至高やわぁ〜〜〜♪ホンマにありがとうね。」


うーん、地獄。


璃澄「ねぇトッチィくん。昂ってきたから致していい!?」


陶次郎「・・・絶縁、されたくないでしょ?」ニコッ


璃澄「ひぃっ!?」




陶次郎「ったく、レイも女装にハマってるけど、リィリもレイの女装姿にドハマリじゃねーか。しかも人に恥をかかげかけながら。おれは運が良いから回避出来し構わないけど、普通は拒絶される様な頼み方やぞ?」


璃澄「あ、あたしはこれ以上は危険やと思ってたのに、そこに拍車をかけてレイくんを更なる女装沼にハマらせたのは、建さんでしょうが!!!」


陶次郎「うわー、凄まじい他責思考。」


ここで言う【建さん】とは、レイの次兄である鶏本建五(ケンゴ)さんの事を表す。要するに、レイの女装を続けさせた遠因であるのだ・・・が、そもそもの発端はリィリだ。


陶次郎「建さんがレイに女装を続けさせたのと、リィリがこうしてレイの女装姿で発情してるのとは別問題だろ。」


璃澄「は、発情!?ちょっとトッチィくん、頼んでる立場から言うのは憚られるけど、すこーしデリカシーが無いんじゃないかなぁ〜?」


陶次郎「すまん。確かにちょっとカッとなった。おれとしても、こんな事はもう終わりにしたいから、突き放す言い方になっちまった。だって・・・・・・っ。」


璃澄「・・・だって?」







陶次郎「おれだって、自分自身を次のステップに進ませたいんだよ!!!」


璃澄「!!!」


船井智紗ちゃん。未だ会えずにいる運命の人。人の恋路手助けも楽しいが、おれも漸く自分の【路】を見つけたのだから、そこに邁進したくなるものだ。


陶次郎「だからそろそろ、レイに直接顔を合わせな。リィリも高3やし、来年になるとチャンスはもっと減るぞ?」


璃澄「えっ、そんな急に言われても、自制できる自信なんてないし、そのまま合わないほうがお互いの為だt」




あぁ、本当、煩わしい。醜い【滞留】だ。全部ブチ壊してやる。レイ、悪く思うなよ。




陶次郎「この際だから言っとくか。アイツめちゃくちゃ誤解してるぞ。前話題に挙げてた性転換症の子とレイが昨日話をしてたのを聞いてたんやが、レイはリィリに嫌われたと、男として思われてないと誤解してるんやと。」


璃澄「えっ!?そ、そんな、つもり、なんて、寧ろあたしは・・・。」




真実を知って泣き出すリィリを余所目に、おれはこの家を去った。


【平穏】とか綺麗事を宣いながら【変化】を拒むと、それは【滞留】となり、いずれ【腐敗】を生む。宇橋ちゃんみたいに性転換症の様な稀有な例の場合はいざ知らず、ありきたりな幼馴染の悲しいすれ違いを両側から何年も見せられ続けると、おれ視点ではただの【滞留】なのだ。流石に限界だった。許せ。




〜メルティッド・チョコレート〜

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