第460話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョンの火竜草の花探索終了
ユラが、サツキの顔を下から覗き込んでいる。心配そうな表情を浮かべていた。
「何か元気ない?」
「そんなことないよ」
「また何か変なこと考えた?」
「考えてないよ」
「じゃあ何でそんな泣きそうな顔してるんだよ」
「してない」
「嘘つけ」
ユラはいつもこれだ。サツキが何でもないふりを通そうと頑張っているのに、それを即座に見破る。それまでのからかう様な態度を引っ込め、瞬時に真面目なものになるのだ。どちらがユラの本当の姿なのか、サツキが疑えない位に真剣に。
「……なあサツキ」
「なに」
「温泉の周りをぐるっと探索して、見つからなかったら俺と風呂に入ろうぜ」
「は?」
突然この人は何を言い出すんだろう。
「いや、普通に無理」
「水着になればいいじゃねえか」
「ユラは水着持ってきたの?」
「ねえよんなもん」
ということは、ユラは素っ裸で入るつもりなのか。サツキと一緒に。
「いやいやいやいや」
サツキは全否定した。たとえサツキがうまくメタモラで水着を着た自分を想像出来たとしても、隣のユラは素っ裸。そしてサツキはこれまで男性の裸なんぞ見たことがない。いや、痴漢でコートの下が素っ裸のおっさんには出会ったことはある。だから皆無ではないが、あれは汚物だ。だけど今回はそれと種類は全く違い、その、イケメンの物など絶対見たくない筈なのに目が行ってしまうだろうことが想像出来たので、だから絶対無理だった。
ユラのあそこを見た後に、一緒に何事もなかった様に接することが出来るか? 絶対無理だ。恥ずかしくて死んでしまうのは目に見えていた。
すると、ユラが堂々と言った。
「だってねえもんはねえ」
「ねえ、と言われても。大人しく男風呂に入ってよ」
「やだよ。折角ウルスラとアールがさっさと寝ちまってるんだ、こんな機会滅多にないもんな」
「いや、でも無理。無理無理無理」
「何でだよ、俺は別に見られたって構わねえよ」
「私が嫌なんだよ」
「俺が見せていいっつってんだから遠慮すんな」
「遠慮します!」
「なんだよ、勇気ねえの」
「こんな勇気なら要らない! それにウルスラの水着だって見てないもん!」
サツキがそっぽを向くと、ユラが背後からサツキの頭をぐきっと後ろに傾けた。
「痛いんですけど」
「いいことを考えた」
「なに」
「
「ブラインド……」
「な、頼むよサツキ。俺、サツキと風呂に入るのをすっごく楽しみにしてきたんだ」
「なんで勝手に楽しみにしてんの」
「冷てえなあ。な、頼む! 絶対見ないから!」
「ていうか苦しい……」
「お願い聞いてくれよ」
頭を思い切り仰け反らされながらお願いされても説得力がないが、絶対見ないなら、まあ問題はない、かもしれない。
「……絶対見ないでね」
「約束は守る」
「じゃあ、少しだけね」
「本当か!? ありがとうサツキ!」
ユラは満面の笑顔になると、サツキを仰け反らせたまま、上からぶちゅっとキスをしてきた。
今日はもうしないって言ってたのは一体。
サツキは、心の中で大きな溜息をついたのだった。
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